中国時間5月6日3時、イギリスのクルーシブルシアターで行われていたスヌーカーの世界選手権で、大勢の中国人が国営テレビの中継に見入っていた中、中国の趙心童選手(28歳)が優勝した。アジア勢初の世界チャンピオンとなっている。

今回の優勝は、天才選手の谷底からの逆襲による世界制覇であった。
趙選手は1997年に陝西省西安で生まれ、1990年代に父親が深センで事業を始めた。初めはサッカーや卓球が好きだったが、8歳からスヌーカーに転向した。
2005年、スヌーカー中国オープンで、ワイルドカードで出場した当時18歳の丁俊暉選手が、「皇帝」と呼ばれたヘンドリー選手を破って優勝し、「コモンウェルスゲームズ」のスヌーカーが中国でブームを招いた。
趙選手は17歳の時にインタビューで、「子供のころは丁選手みたいになりたいと思っていた」と語っていた。ちょうど8歳の誕生日に丁選手が優勝したということで、「あのころは『自分が表彰台のトップに立ったらどんな気分だろうか』とずっと思っていた」と話している。
趙選手は2016年にスヌーカーのプロへ転向し、ナチュラルに攻めるスタイルでたちまち頭角を現した。2021年に「イギリス選手権」で優勝してブレーク、翌2022年1月には順位決定戦で2度目のチャンピオンとなり、さらにドイツのマスターズでも優勝して世界ランキング6位に浮上し、将来のトップスターと見られた。

趙選手は今回の優勝インタビューで「2年前に出場停止処分となって、自分にとってスヌーカーが何なのかが分かった。700日以上も休まず練習を続けてきた」と語った。
新世代のチャンピオン誕生について、苦しみながらも粘り抜いて復活を果たした姿に賞賛の声が寄せられた。イギリスの「ガーディアン」は、「中国の天才が『2年間出場停止』でヨーロッパの若手を打ち砕いた。わが国は新人が出ない」と評している。
欧米勢の牙城を崩して世界選手権のタイトルを得た趙選手は、賞金50万ポンドを獲得した。これによりレジェンドへの道のりも切り開かれ、「フォーブス」によると今回の優勝で少なくとも5.7億元分の商業価値が生まれたという。契約金による収入は、フリースタイルスキー女子の谷愛凌選手やプロテニス女子の鄭欽文選手といったトップアスリートに肩を並べ、スポンサー料や賞金額も引き上がりそうである。
(中国経済新聞)