「ユニコーン」をたずねて 星聯精密:PETボトルの先端金型企業

2025/04/1 18:30

広東省仏山の三竜湾にあるハイテクイノベーションエリアに、巨大なタンカーのような形の先端的な工場が存在する。食品や飲料用のPET容器の金型の開発や製造を手掛ける星聯精密機械だ。30年以上前に設立され、製品のうち海外出荷分が70%近くに及び、60以上の国や地域で計600以上の会社に利用されている。

隙間市場の開拓に努め、研究開発にこだわり、デジタル化への改良を推進。この3つの取り組みをバックにたちまち業界トップの位置に上り詰め、世界的なブロー成形用金型の大手メーカーとなった。高級飲料容器におけるシェアは世界で2番目、アジアではトップに立っている。姜暁平総経理は、「この1年は創業以来最高の年となり、収益が20%以上増えた」と述べている。

PETボトル用金型の事業を30年以上手掛ける

コカ・コーラ、ネスレ、百歳山……星聯精密のショールームに足を運ぶと、誰もが知っているPETボトルがずらりと並ぶ姿が目に入る。形も様々で、本体に刻まれたラインもそれぞれ特徴がある。そのどれも、星聯精密の主力製品であるブロー成形用金型から生まれたものだ。プラスチック原料に熱を加えて溶かし、筒状の金型の間に流し込み、ブローピンからエアーを吹き付けることで膨張して金型の内側部分と接触しボトルの形になっていく。

金型は、30年以上前は高価なものだったので、どの飲料メーカーもコストを下げるために同じものを共用していて、市販品のPETボトルの形状も今のような各種様々といった状態には程遠かった。

姜総経理は会社の設立当初を振り返り、「1990年代の初め、中国の食品や飲料の容器の業界はまだ黎明期であり、生産設備のほとんどが海外から導入したもので、中でも金型はとても高価だった。1000万元(約2億600万円)相当の包装の生産ラインで金型の費用が400~500万元(約8200万円~1億300万円)を占めていたのではないか」と言う。

隙間市場は成長の可能性を十分にはらむ。星聯精密はPETの食品や飲料の容器用金型に狙いを定めて1993年に誕生した。当初は模倣した製造しかできなかったが、研究開発、生産、測定、テスト、アフターサービスを手掛ける総合的なエンジニアリング事業会社に成長した。技術力や優れた品質、アフターサービスなどをバックにマーケットの先頭を走るようになり、海外勢による価格面の独占状態を切り崩したのである。

様々な銘柄や形のPETボトルが並ぶ星聯精密のショールーム。どれも同社のブロー成形用金型で作られたものだ。

こうして、それまで数十万元であったブロー成形用金型が数万元程度で手に入るようになった。「われわれが金型で『価格破壊』を起こした結果、よりどりみどりのPETボトルが続々と出回るようになったのだ」と姜総経理は言う。

星聯精密製のブロー成形用金型は今、業界内で確固たる地位を占めるようになり、高級飲料では中国国内で半分以上のシェアを確保している。

姜総経理は、「特に2013年から海外市場の開拓への取り組みを強化し始め、2024年には製品のうち輸出割合が70%近くに達した。今は60以上の国や地域で計600以上の会社が利用している」と述べている。

現場作業者が開発者に転身

星聯精密の温度調節生産ラインに足を運ぶと、よくありがちな従来の金型メーカーとは異なり、多くのロボットアームがきちんと「踊り」を披露しているような光景が見え、作業者はほとんどいない。7、8台のマシンが1人の手でいとも簡単に操られており、従来の作業者に代わって設備管理のエンジニアに扮しているのである。

姜総経理は、「最近はデジタル化や自動化を進めたことで製造現場で人の数がどんどん減った。ほとんどが訓練を受けて開発者になったのだ」と言った。2015年から10年近くにわたる取り組みを経た結果、従業員の数はさほど変わらないものの開発者の割合が当初の10%から40%近くに拡大している。

星聯精密の恒温生産ライン

姜総経理は、「研究開発がなければ、厳しく言うと受注がないのと同じだ」と述べ、常に研究開発を会社成長の原動力と見ていると言う。社員の構成割合が変わっただけでなく研究開発費への投入も充足しており、年間売上高のうち10%近くを費やしている。「2024年は4000万元以上を使った」とのことである。

星聯精密は今、ボトル用金型の開発や設計から末端製品の測定やテストまでのトータル的な研究開発体制を打ち立てており、金型の品質を引き上げ、製造の精度も向上させ、研究開発や製造の期間を短縮して生産規模を拡大している。

このような粘り強い取り組みで、ふんだんな成果を挙げている。特許の取得件数は500件以上、国際規格1項目と国内規格10項目の策定に加わり、このうち国内の4項目は初回作成元になっている。

デジタル化への改良で従来型産業が生まれ変わり

製造現場では、「星聯精密デジタル化工場」という大型画面が各モジュールの瞬間データを点滅させており、生産ラインの頭脳の役割を果たしている。また作業者のノウハウやスキルが今やデータベースの中に格納され、コーディング担当者が自動化プログラムを作成し、端末を経由して生産設備に送信されており、手作業は必要なくなった。デジタル制御率は今、95%以上に達している。

星聯精密は2003年からデジタル化への改革を歩み始めていた。姜総経理は、「デジタル化によってあいまいな言語が工程データの言語へダイレクトに変換されるようになり、製品をグロ-バル化するにあたり、販売後の人的コストが大幅に削減された」と言う。短い時間で業界大手に上り詰めた一番の秘訣は、デジタル化のレベルが先端を走っているからなのである。

(中国経済新聞)