復旦大学の人口研究所の張震教授と老齢研究院の李強教授が、中国人口学会がかなり以前に創刊した総合的な人口学の専門誌で全国級の刊行物である「人口研究」の最新号で、「中国の『多死社会』の特徴と変化の仕組み」と題した論文を発表した。
これによると、「多死社会」となる理由として、過去の出生数の変動、生存率の上昇、死亡率の低下という3つの要因を挙げている。1960年代のベビーブームなど、出生数が多かった時期があったことで、今の高齢者の死亡数急増につながっている。また医療条件の改善や健康レベルの向上で寿命が長くなり、高齢者の数が増えたことも死亡数増の原因となる。
この論文では、「高齢者の死亡数の増加は人口構成の変化による結果だが、中国はその時期が急激に訪れ、規模も大きく、社会的にもこれまで見られなかった課題となっている」と書かれている。
人口への研究の結果、出生数は建国当時の1949年から急激に増え、1958年までが第一次ベビーブームとなり、その後1963~1972年が第二次ベビーブームとなった。1980年代に入って出生率は落ちたが、ベビーブームの時期に生まれた世代が出産適齢期になってまたやや盛り返した。しかし最近は、一人っ子政策の緩和で一時期増えたものの、全体的には低下傾向にある、との流れをたどっている。
また、死亡数も大きな変化をたどっている。1949年は死亡率が20.0‰、死亡数が1083.3万人であり、世の中の秩序が回復し、特に医療や衛生面が徐々に改善したことで、死亡率は1957年には10.8‰まで下がった。この年の死亡数は698万人である。1980年代に入ると死亡率は低いながらも徐々に高まり、2023年には7.87‰で死亡数は1110万人であった。平均予想寿命は1980年には67.77歳であったが、2023年には78.20歳となっている。
年齢別の死亡率も低下傾向で、平均寿命も徐々に長くなってはいるが、20世紀半ばのベビーブーム世代が高齢化していることで人口構成も変わり、死亡数が急速に増え、2061年にはピークの1900万人となると見られる。2024年~21世紀末の死亡数は合計12.3億人、年平均1600万人と見られている。
2061年以降は、21世紀以降の出生数が減り続けていることで死亡数が減ってゆく。乳幼児や若い世代、大人の死亡率が減り続けることで、出生者の生存年数が長くなる。出生者が少なくなることで、高齢者の死亡数減少という状態になる。すなわち、出生数が少ない状態が続くことで高齢での死亡数が減るという傾向が22世紀まで続く。ただし21世紀末になれば死亡数は高止まりすることになる。
この論文の作者は、政府や社会に対し、命や死に関する教育の普及、末期高齢者の生き方の改善、葬儀関連サービスの取り組み強化、お年寄りの権利保護や遺産問題への法的サービスなど、一連の高齢化対策をあらかじめ立てておくべきだと主張している。間もなく迎える「多死社会」に際し、社会へのダメージを抑えるためのものだという。
(中国経済新聞)