ベトナム、ライブコマースでの海外品購入が急増 中国からの出荷数が1日400~500万件

2024/06/22 08:30

ベトナムのランソン省に接する広西チワン自治区凴祥市。深夜も商品販売のライブ配信に人気が集まっている。ベトナム出身のキャスターがスマートフォンを前に、大勢の客を集めようと化粧品のPRや服の試着をしている。市の越境EC協会副代表である彭雲帆氏は、「中国製の化粧品やアパレル品はベトナムで大人気だ。ライブコマースはベトナムから東南アジア全体に広まっており、中国企業にとって『海外進出』の新たな手段、そしてベトナムの貿易を支える力となっている」と述べている。

彭氏は、以前は高級家具を取り扱っていたが、競争が激化したことや若者に不人気であることから、海外向けのライブコマース運営に転身し、拡販を狙う企業向けに現地の市場調査を行っている。

凴祥市では、彭氏と同じ考えの持ち主が増えている。コロナ禍に入ってから相次ぎ様々なタイプの越境EC企業が生まれ、2023年4月に越境EC協会が発足し、保管や配送、ライバーの養成、仕入れ関連や貿易などを一括りにしてエコロジーの形成を目指している。

凴祥市の越境ECライブ拠点には現在、ベトナム語のライバーが30人以上おり、TikTok ShopやShopee、Lazadaなどベトナムで人気のサイトで、中国の化粧品、アパレル、小型家電などをライブでPRしている。彭氏は、「凴祥はベトナム語が通じやすく、ライバーも簡単に集まる」と述べている。その1人であるチャウさんはベトナムのランソン省出身で、それまで色々な仕事をしてきたが今の職を誇りに感じると言い、「キャンペーンをした時は視聴者が何万人も集まることもある」と述べている。

「2024年ベトナムEコマース情勢」によると、成年者の通販サイトの利用頻度について、「每週頻繁に購入する」が32%、「週に少なくとも1回は購入する」が22%であった。ベトナム通販協会によると、2024年第1四半期、ライブ配信から買い物をした人の割合は95%であった。

ただしライブコマースは、一夜にして超人気となる商品もある一方、たちまち愛想をつかされて売れ残るものもある。むやみに大量の人気商品をベトナムに運ぶと、売主側が安値で売って損をしてしまうことになる。逆に売り惜しんで品を中国に戻せば、往復の輸送代もかかる上に通関手続きの費用も発生する。よって、品物を中国の国境都市に保管できればやりくりがぐっと楽になる。凴祥市はよく、「ドアを開ければそこはベトナム、2歩進めばそこはASEAN」などと言われる。これこそ、越境ECの基地となりうる大きなメリットである。

ベトナムでは、越境ECのライブ配信が広まるにつれて規制も強化される傾向にある。送られた商品について、現在は増値税が免除となっているが、ホー・ドゥック・フォック財政大臣は6月17日、「増値税法」について、海外通販の品物に10%の増値税をかけるようにとの修正案を国会に提出した。ベトナム国会財政予算委員会のレ・クアン・マイン委員長によると、「中国から届く品は1日およそ400~500万件で、値段は10万-30万ドン(約620~1860円)のものが多い」という。

しかし、こうした規制強化の中でも勢いは止まらない。ベトナムの通販市場は2023年には前年比25%以上プラスの250億ドル(約3.9兆円)に達し、2025年には390億ドル(約6.2兆円)になると見られ、東南アジアの中で成長度は最速、市場規模は2番目となりそうである。

(中国経済新聞)