6月に入り、中国映画界で夏休み枠(6月1日-8月31日)各作品の上映が始まった。これまでで60本以上の上映が決定しており、ジャンルもかなり豊富である。海外作品では、日本のアニメ「ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」、アメリカのアニメ「インサイド・ヘッド2」「怪盗グルーのミニオン超変身4」(Despicable Me 4)など、中国映画は今回のカンヌ映画祭受賞作である「狗陣」(Black Dog)、人気小説を元にした「雲辺有個小売部」( Moments We Shared ) 、香港のアクションもの「海関戦線」(Hai Guan Zhan Xian)、人気のアニメIP「白蛇:浮生」(White Snake: Afloat )などがある。
映画情報サイトの灯塔専業版によると、夏休み枠の興行収入は6月12日現在で8.7億元(約189億円)となっているが、この後については業界内での見方は慎重である。
中央文化観光管理幹部学院の副研究員である孫佳山(Sun Jiashan)氏は、今年の夏休み枠の興収について、好条件が重なった2023年とは異なり過去最高は望めそうにないと見ている。現段階で、放映確定の「白蛇3」「怪盗グルーのミニオン超変身4」以外にインパクトのあるIPが見当たらず、またジャンルも散らばり、作品の出所もさほど豊富でなく、去年ほどの「白熱状態」ではないという。
2023年の夏休み枠は興収が200億元(約4335億円)の大台を超え、過去最高となった。孫氏はこれも踏まえ、コロナの発生から何年か過ぎた中、今年が最も影響を受ける年だと見ている。「去年はそれまでのたくわえも多かっただろうが、今年の上映作品はおおむねコロナ明けで活動が不十分な中で撮影されたものだ。去年や今年に制作されたものは来年や再来年の上映となる。よって、今年はこれまでの連休枠でも今一つ盛り上がりを欠いている」と言う。孫氏はまた、エンタメカルチャーへの期待度は2023年に十分に満たされ、これに観光も合わせた形でさらにレジャーが進み、夏休みは行楽客が増えてその分映画を見る人が減る、と見ている。
このように夏休み枠への見方が弱気である中、先ごろの3日間の端午節枠の興収も最近10年間では2022年の1.78億元(約38.6億円)に次いで2番目に少ない3.83億元(約83億円)で、今年の映画市場がパッとしない様子が示された。興収データ分析を手掛ける猫眼研究院の上級アナリストの張彤氏は、「端午節枠は興収が1日平均1.27億元(約27.5 億円)で、新作はいずれもまだ1億元(約21億円)に満たず、『ママと同級生』と『掃黒•決戦(Break Through the Darkness)』がかろうじて累計1億元超えで、総じて予想を下回った。去年は『消えた彼女』という大作があったが、今年は『主力作品』が見当たらない」と述べている。
ただし封切りが未定である人気作品も多いので、夏休み枠に対し前向きな予想も出ている。中信建投のメディアチームはあるレポートで、「枠にまだ空きがあり、上映時期未定の人気作品も多い。これら主力作品の上映具合によって夏休みの映画市場の最終結果は大きく左右される」と見ている。また張氏は、作品の中には猫眼でかなり人気を呼んでいるものもあり、休みが近づくにつれて強力作が続々と上映決定となるものと見ている。
(中国経済新聞)