第14期全国人民代表大会(全人代)第2回会議が3月5日から11日まで、北京の人民大会堂で行われた。2024年の実質経済成長率の目標を「5%前後」と定めた政府活動報告を承認した。国務院(政府)組織法を42年ぶりに改正し、党が国務院への指導を強めると明記した。注目されていた王毅共産党政治局員兼外相の外相ポスト交代はなく、副首相級の国務委員の補充もしなかった。
全人代の開幕日の5日、李強首相が政府活動報告を読み上げ、2024年の実質経済成長率の目標を、前年と同じく「5%前後」にすると発表した。しかし、政府活動報告は成長目標の達成を「容易ではない」と記した。
政府活動報告は、「今年わが国を取り巻く環境は、依然として戦略的チャンスとリスク・課題が併存し、有利な条件が不利な要素にまさっている。中国には顕著な制度面での優位性、超大規模市場の需要面の優位性、産業体系の完備という供給面の優位性、高い資質の労働者が数多くいるという人材面の優位性を有しており、科学技術イノベーション能力が持続的に向上し、新産業・新モデル・新たな原動力が急成長し、発展の内生的原動力が絶えず現れ、経済が上向き、長期的に堅調に推移するという基調に変化はなく、また変化することもないため、自信を強く持たなければならない。一方で、最悪の事態を想定する思考を堅持し、万全な準備を整えてさまざまなリスク・課題に立ち向かわなければならない」と指摘した。
今年の主な所期目標は次のとおりである。
GDPの伸び率は5%程度とする。都市部の新規就業者数は1200万人以上、都市部調査失業率は5・5%程度とする。消費者物価の上昇幅は3%程度とする。◇住民所得の伸び率を経済成長率と同ペースに保つ。国際収支の基本的均衡を維持する。◇食糧生産量は6億5000万トン以上とする。GDP1単位当たりのエネルギー消費量を2・5%程度減小させて、生態環境を持続的に改善する。
今年は中華人民共和国成立75周年であり、第15次5ヵ年計画の目標と任務を達成する上で肝心な一年である。今回の全人代で、中国が低迷する経済に対し、どのような打開策を打ち出すかに注目が集まった。
中国政府は以下の対策が策定された。
一、積極的な財政政策は適度に強化し、その質・効果を高める。24年の財政赤字は4兆600億元(約83兆円)で国内総生産(GDP)の3%と見込んだ。財政赤字に算入しない超長期の特別国債として1兆元分(約20兆円)を発行し、重要な国家プロジェクトなどに投じる。
二、 2024年の科学技術費を前年比で10%増の3708億元(約7兆7000億円)に引き上げる。中国の競争力を左右する半導体などで産官学が一体となった挙国体制を整え、米国の対中包囲網に対抗する。軍事と民生の技術を組み合わせ双方の技術力を高める「軍民融合」も加速する。
三、現代化産業体系の構築を大いに推し進め、新質の生産力の発展を加速させる。イノベーションの主導的役割を十分に発揮させ、科学技術イノベーションをもって産業イノベーションを推し進め、新型工業化を加速度的に推進し、全要素生産性を高め、発展の新たな原動力と優位性を不断に創出し、社会的生産力の新たな飛躍を促す。産業チェーン・サプライチェーンの最適化・高度化を推し進める。
四、新興産業と未来産業を積極的に育成する。インテリジェント・コネクテッド新エネルギー車など産業の競争優位性を維持・向上させ、水素、新素材、創薬など先端新興産業の発展を加速させ、新たな成長エンジンとしてバイオものづくり、民間宇宙産業、低空経済などを積極的に発展させる。未来産業発展計画を策定し、量子技術、ライフサイエンスなど新たな競争分野を開拓し、未来産業先導区を数多く設立する。
五、デジタル経済の革新発展を踏み込んで推進する。ビッグデータ、AIなどの研究開発と応用を深化させ、「AI+」行動を展開し、国際競争力を持つデジタル産業クラスターを育成する。製造業デジタル化行動を実施し、インダストリアル・インターネットの大規模応用を加速させ、サービス業のデジタル化を推進し、スマートシティとデジタル農村を整備する。
六、ハイレベルの科学技術の自立自強を加速度的に推進する。基礎研究の系統的な計画・立案を強化し、一群のイノベーション拠点と卓越研究チーム、重点分野を長期的かつ安定的に支援し、独創的イノベーション能力を高める。国家重要戦略と産業発展の需要に焦点を当て、重要科学技術プロジェクトを企画・実施する。
七、消費の安定成長を促進する。所得拡大、供給の最適化、規制緩和などを総合的に推進し、潜在需要を掘り起こす。新しい消費形態を大きく成長させ、デジタル消費・グリーン消費・ヘルスケア消費の喚起策を実施し、スマートホームや文化娯楽観光、スポーツイベント、「国貨潮品(国産ブランドのトレンド商品)」など新たな消費市場を積極的に育成する。
八、新型都市化を積極的に推進する。都市群、都市圏に依拠することを重視し、大中小都市の調和発展を促す。成都・重慶二極経済圏の整備を推し進める。都市再生行動を着実に実施し、フェーズフリーの公共インフラの整備と「城中村(バラック地域)」の再開発を進め、埋設配管の整備を加速し、老朽住宅地のエレベーター設置、駐車場不足などの問題解決を推し進め、バリアフリー・ユニバーサルデザイン事業を強化し、住みやすくスマートで強靭な都市を築き上げる。
九、外資誘致にいっそう力を入れる。対中投資ネガティブリストを引き続き縮小し、製造業参入規制を全面的に撤廃し、電気通信、医療などサービス業への参入規制を緩和する。対中投資奨励産業目録を拡充し、外資系企業の収益の再投資を奨励する。外資系企業の内国民待遇を徹底し、法に基づいて政府調達、入札、標準作成への平等な参加を保障し、データ越境移転などの問題解決を推し進める。
中国経済の悲観論に対して、王毅外相は7日に開いた記者会見で「中国の(前進への)エンジンは依然強い。『次の中国』は、やはり中国だ」などと力を込め強調した。
(中国経済新聞)