中国最大の飲料会社である農夫山泉の創業者、鐘睒睒(チョン・サンサン、Zhōng Shǎnshǎn)氏が2024年3月3日に同社のWechatアカウントで発表した「私と宗氏との出来事」という文章が、物議を醸している。先ごろ死去した飲料大手「ワハハ」の創業者である宗慶後(そう けいこう)氏について述べたものであるが、その後に「ワハハを持ち上げて農夫山泉を中傷」といったコメントや動画が現れ、これを受けて農夫山泉は商品の売上が大きく減っている。また別に、「農夫山泉の銘柄品である東方樹葉の緑茶の包装に日本伝統の建物やこいのぼりが描かれており、これは『媚日(日本に媚びる)』だ」と見て、中国文化が侵害されたとして非難する声も出た。農夫山泉はこれに対して、「包装のイラストは中国の寺のイメージを元に描いたもの」と釈明している。
しかし農夫山泉はこの騒ぎを受け、口コミや商品販売量、株価が下がっている。データによると、Tiktokの旗艦店の売上高は、2月25日には10-25万元(約200万-500万円)だったが3月1日には5000-7500元(約10万-15万円)に下がり、この店のライブコマースは3月1日から10日間も配信されていない。さらに株式市場も同様であり、農夫山泉の時価は2月29日には4993億香港ドル(約9.4兆円)だったが、3月11日の終値は4724億香港ドル(約8.9兆円)であり、7営業日で約270億香港ドル(約5085億円)も減少してしまった。
また3月10日夜、江蘇省常州のセブンイレブン2店舗が農夫山泉の全商品を販売中止とした。ネットでは、「媚日行為」をした疑いがあることが原因とも見ている。
これについて江蘇省のセブンイレブンは3月11日、店員の個人的な行為であり「本社の立場を代表するものではない」と釈明した。現地のセブンイレブン運営側によると、加盟店は会社の規則の範囲内で、商品を販売したり撤去したり、入荷したりすることができるという。省内の各店舗でこのようなケースが広まっているわけではないが、農夫山泉に対してまたも「批判の声」が上がり、トラブル続きと見られている。
また農夫山泉は、こうしたネットの声を受け、実店舗の売上も落ち込んでいる。ある小売店では、24本入りの飲料水はこれまで1日に1ケース売れていたが、今は3日に1ケースになっている。「1か月に100本売れていた飲料水が今は4か月経っても売り切れない。大した損でもないが、在庫がたまってしまう」とのことである。
あるスーパーでは、店長が農夫山泉の冷蔵庫にワハハのミネラルウォーターを全部詰め込むという皮肉めいた行動をとった。さらに、客から「全部ワハハに換えてくれ」という訴えが殺到したため、農夫山泉の商品を撤去するようにとの指示を受けた店員も多く、結果的に発売中止となっている。
(中国経済新聞)