エヌヴィディアCEO、ジェンセン・フアン氏の起業への道のり

2024/02/25 20:30

アメリカの工学部門で最高の栄誉である全米技術アカデミー(NAE)がこのほど、2024年の新規会員114人と外国人会員21人を発表した。この中で特に目を引く人物が、エヌヴィディアの創業者兼CEOのジェンセン・フアン氏である。

「AI(人工知能)の父」と呼ばれるフアン氏が選ばれた理由は、高性能の画像処理装置(GPU)でAI革命をもたらしたためである。アイアンマンのマスク氏、マイクロソフトのナデラ氏に次ぐテクノロジー界からのNAE選出となった。

2024年はテクノロジー系の企業にとって険しい出だしとなったが、エヌヴィディアは逆だった。

588億ドル(約4226億元)もの売上を出した2023年の勢いそのままに、2024年1月に株価が再度最高値を更新し、時価は3000億ドル近く上昇した。背後でエヌヴィディアのかじを取るフアン氏も、保有資産額298億ドルでフォーブスの富豪ランキングに入り、アメリカの華人でトップとなった。

フアン氏は本籍が浙江省麗水で、1963年に台湾省台北市で、化学技術者の父親と教師の母親の間に生まれた。両親はフアン氏と兄によりよい教育を受けさせるため、フアン氏が9歳の時に2人をアメリカ・ワシントンの叔父の家に預けたが、暮らしにゆとりがなく、2人はケンタッキー州郊外の全寮制学校に送られた。

この学校は、非行少年の「収容所」のような存在で、年少だったフアン氏はしばしばいじめに遭い、学校のトイレ掃除が定番の役目となった。このような環境でタバコを覚えたりケンカをしたりして、周囲からは不良同然に見られていた。

しかし、これは仲間たちに溶け込むための策であり、本人は決して堕落せず、むしろ一段と逆境に強くなっていった。フアン氏は今でも取材の際に、その当時をありがたく思っていると言い、「自分が一番きれいにトイレ掃除をし、皿洗いも一番うまかった」と冗談交じりに語っている。

1974年、フアン氏は両親がアメリカで永住権を取得したことで、正規の学校に通うようになった。もともと賢かった彼は弱冠16歳でオレゴン州立大学の電子工学部に進学し、そこでコンピューターグラフィックという志望分野を見つけた上、理想の女性と言えるロリ・ミルズさんと出会った。そして、のちに妻となる彼女に対し、「10年後、30歳になった時に必ず会社のCEOになる」と約束した。

そして30歳になった1993年にフアン氏は、10年前の約束通りにCEOになった。その会社はエヌヴィディアで、フアン氏は共同発起人の1人であった。

1999年、エヌヴィディアはCPUで圧倒的優位に立っていたインテルに対抗するため、世界初のビデオカード・GPU——GeForce256を発表し、後の成長に土台を築いた。

フアン氏はGPU市場の拡大に向けて大きな決断を下した。汎用並列コンピューティングプラットフォームを構築するため、ひそかにCUDAというプロジェクトを始めたのである。

2006年6月、CUDAが正式に利用開始された。そのわずか1年後に、コンピュータ科学者であるアンドリュー・ヤン=タック・ン氏がこれをベースに初の深層学習モデルを作り上げ、1000万枚の画像からネコを見分けることに成功している。

これにより業界が湧きたち、低コストでのAIコンピューティングが可能となる希望が芽生えて、GPUがたちまちテクノロジー界で光輝く存在となった。

2016年、エヌヴィディアはまたもAIの種をまいた。OpenAIの誕生に当たり、フアン氏が自ら世界初のDGXをOpenAIに引き渡した。エヌヴィディアにおける当時最強の浮動小数点演算GPUであった。

フアン氏に支えられたOpenAIは、6年後にChatGPTを発表し、世代交代の感覚を1か月に短縮した。ChatGPTが世界に広まる中、チップのサプライヤーであるエヌヴィディアは急速に普及する生成AIの波に乗っていった。これにより、エヌヴィディア、そしてフアン氏の名前がこの世界で広く知られるようになった。

そして最近、エヌヴィディアCEOのフアン氏の動画が世界的にSNSで拡散している。

花柄のベストを着て大きなハンカチをくるくる回しながら社員と一緒に踊っている様子や、抽選箱からラッキーナンバーを取り出して当選者の名前を呼んでいる姿が映ったものである。

また、世界的チップメーカーのCEOとなったフアン氏が、4年ぶりに中国本土を訪れたこともかなりの関心を招いた。香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は24日、「米中関係が緊張状態にある中で、中国の社員や取引先と親し気に振舞うフアン氏の姿が見られた」と報道した。エヌヴィディアのある広報担当はこれに対し、「コロナ禍による4年間の休止を経て、フアン氏は現地の社員とともに中国の伝統である春節を祝った」と答えている。

このところアメリカから締め付けられている中国だが、エヌヴィディアにとってはやはり重要な市場である。エヌヴィディア、そしてフアン氏は今後、中国でどのようなきらめきを放つのだろうか。

(中国経済新聞)