「ユニクロがまた稼いだ」。10月12日の日本での反応である。
この日、「ユニクロ」ブランドで知られ、アパレルの製造・販売を手掛けるファーストリテイリングが2022年度(2022年9月~2023年8月)の決算発表を行った、創業者である柳井正会長は、「この1年間、コロナ禍からの脱却を果たし、売上高も2021年度より20%増えて2兆7665億円(約1349億元)と過去最高を記録した。純利益も8%増の2962億円(約144億元)であった」と述べた。
柳井会長は中国市場(香港、マカオ、台湾も含む)について、「売上高は全体の43%を占め、2022年度は前年より115%も増えて6202億円であった。純利益も125%増の1043億円となり、いずれも過去最高だった」と報告した。
柳井会長は売上高について、来年8月までの2024年度は3兆円を突破し、数年以内に5兆円を超え、10兆円という目標に突き進んでいくと言った。
ただ中国に進出している日本企業を見ると、ユニクロの「稼ぎっぷり」に比べて、製造業が不振である。
同じ12日、現地の日本企業で結成される「中国日本商会」の本間哲朗会長(パナソニックHD代表取締役副社長、中国・北東アジア総代表 )が北京で、在中国日本企業へのアンケート調査の結果を発表した。
アンケートは9月に実施したもので、1410社から回答を得た。これによると、「23年度は中国への投資を拡大するか」との設問に対し、「投資をしない」や「投資額を減らす」との答えが47%、「前年同額」が37%だった。「投資を大幅に増やす」は16%となっている。
また中国の投資環境については、「満足」が50%、「さらに改善してほしい」も50%だった。
報告によると、不動産市場の悪化や失業率の増加により、中国の景気を心配する声が6割近くに達している一方、「中国経済は回復すると信じている」も半数近くにのぼった。
ユニクロが好調ぶりを示す一方、多くの企業が中国市場に慎重な見方を示しており、各社ともまずまずの業績を上げている一方で製造業は不安を抱えている、といった様子がうかがえる。
「中国市場をどうするか」。これは多くの日本企業が抱えている問題である。巨大な市場を手放したくない一方、中国への興味も薄れ、気持ちも薄らいでいる。
「日本は中国を必要としているのか」。企業のリーダーも政治家も考えるべき問題である。必要なのであれば、どのように中国を理解し、中国に合わせ、中国の経済成長に加わっていくか。必要ないのであれば、どのように中国から撤退するか。
私は以前、「好むと好まざるとに関わらず中国は中国であって、相手のために変わることはない」と書いたことがある。ならばこのような状況で、落ち着いて中国を見つめ、冷静に中国に適応すること、これは日本企業にとって真摯に対処しなければならない問題である。
(文:徐静波)
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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。中国第十三回全国政治協商会議特別招聘代表。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。
講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。
日本記者クラブ会員。