珠江デルタの常住人口、8000万人突破 広東に続く人口集積

2026/09/13 11:30

中国南部の広東省で、人口の集積が続いている。なかでも広州、深圳を中心とする珠江デルタ9都市の常住人口は2025年、初めて8000万人を突破し、8019万6100人に達した。前年から87万2600人増加しており、中国国内でも人口流入が続く代表的な地域となっている。

第一財経の報道によると、2025年の中国の人口増加上位10都市のうち、6都市が珠江デルタに位置する。深圳、東莞、広州、仏山、中山、恵州の6都市で、人口増加数の上位3都市はいずれも広東省だった。

深圳の2025年末の常住人口は1824万8500人で、前年末から25万9000人増加した。全国の主要都市の中でも増加数はトップとなった。東莞は22万9600人増の1080万400人で2位、広州は12万3000人増の1910万1000人となった。

このほか、仏山の常住人口は979万1900人で前年比9万3000人増、中山は457万2300人で7万7700人増、恵州は619万3000人で7万6200人増となった。これら6都市がそろって全国の人口増加上位に入ったことで、珠江デルタの人口吸引力の強さが改めて浮き彫りになった。

珠江デルタの人口増加を支えている大きな要因の一つが、広州、深圳を中心とする都市経済と、東莞、仏山、中山、恵州などに広がる製造業の集積だ。

広州と深圳という中国を代表する大都市に加え、珠江デルタには電子機器、自動車、家電、機械など幅広い産業が集積している。都市間で産業チェーンが形成されていることも、雇用機会を生み出し、若年層を含む人口の流入につながっている。

広東省全体でみても、2025年は「機械増加」、すなわち転入者数から転出者数を差し引いた人口の純流入が約50万人に達した。産業の発展や高度化に伴い、労働力だけでなく、専門人材や若い世代の集積も進んでいる。

中国では農村から都市への人口移動と都市化が進む一方、人口が長江デルタや珠江デルタなど、経済力の高い地域へ集中する傾向も強まっている。珠江デルタはこうした人口移動の恩恵を受ける「成長極」の一つとなっている。

広東省の人口動態を特徴づけているのは、人口流入だけではない。出生数も中国国内で突出している。

2025年、広東省の出生人口は100万3000人に達した。全国の出生人口に占める割合は約12.7%で、単純計算すると、中国で生まれる子どもの約8人に1人が広東省で生まれたことになる。

広東省は6年連続で、中国で唯一、年間出生人口が100万人を超える省となった。また、出生人口が全国最多となるのは8年連続だ。

人口減少が中国全体の大きな課題となるなか、広東省は「人口流入」と「出生数」の双方で他地域との差を広げている。

その背景には、広東省に根付く家族観や婚姻・出産を重視する文化に加え、行政による生育支援策があるとされる。托育(託児)、住宅、雇用、医療などの分野で政策を整備し、子どもを産み育てる家庭の負担を軽減する取り組みが進められている。

こうした動きは省や市といった行政単位だけにとどまらない。広東省では、村や地域の集団経済を活用した出産奨励策も広がっている。

2026年7月21日には、仏山市順徳区陳村鎮大都村が、住民の出産・結婚を支援する制度を村の規約に盛り込むことを決定した。順徳区で体系的な婚育奨励制度を導入する最初の村となった。

制度では、新婚夫婦に一時金2500元、子どもが生まれた家庭に3000元を支給するほか、就学前の子どもについて保育・教育費の補助も適切に行うとしている。

近年、広東省では東莞や仏山などでも、村や地域社会が独自に出産奨励策を導入するケースが相次いでいる。全国的にみても、出産に対する金銭的な支援を打ち出す村・地域の中で、広東省は大きな割合を占めている。

背景には、珠江デルタの村落が比較的強い集団経済基盤を持っていることがある。首都経済貿易大学労働経済学院の姜全保教授は、土地の賃貸収入や村営企業などによって村の経済力が蓄積されており、その資金力を出産奨励に活用できると分析している。

珠江デルタの人口増加は、単なる人口規模の拡大にとどまらない。

深圳や広州といった大都市にはIT、金融、先端製造業などが集まり、東莞、仏山、中山、恵州では製造業のサプライチェーンが広がる。雇用の受け皿が多様であることが、若年層や労働人口を地域に引き寄せている。

一方、中国全体では出生数の減少と高齢化が進み、人口減少への対応が重要な政策課題となっている。その中で、人口流入を維持しながら出生数も確保する広東省の動向は、中国の人口政策を考えるうえでも注目される。

珠江デルタ9市の常住人口が8000万人を超えたことは、単に一つの経済圏の人口規模が拡大したというだけではない。産業、雇用、住宅、教育、医療、そして出産・子育て支援が一体となって人口を引き寄せる「人口集積型の経済圏」が形成されつつあることを示している。

中国の人口減少が続くなか、広東省が今後も「人が集まり、子どもが生まれる地域」であり続けられるのか。その成否は、中国における次世代の都市・経済圏の姿を占う重要な指標になりそうだ。

(中国経済新聞)