ファーウェイが三つ折りスマホを発表、国産チップが切り開く新たな性能領域
中国通信機器大手のファーウェイは9月7日、広州で新製品発表会を開き、三つ折りスマートフォン「Mate XT 2」を発表した。新製品には最新の「麒麟(Kirin)9050 Pro」チップを搭載。ファーウェイが旗艦製品の発表会で新たな麒麟シリーズのチップを発表するのは6年ぶりとなる。
今回のチップで特に注目されるのが、複数の計算ユニットを立体的に配置する「論理折り畳み(Logical Folding)」技術だ。ファーウェイによると、CPU、GPU、NPUなどの計算機能をチップ内部で階層的に配置し、従来の平面的な構造に比べて信号伝送距離を短縮。内部に垂直方向の接続経路を設けることで、通信遅延の低減と性能向上を狙う。
発表会では、ファーウェイ常務取締役で製品投資評価委員会主任、端末BG董事長を務める余承東氏が「麒麟9050 Pro」の技術を詳しく紹介した。同チップは、CPU「霊犀」、GPU「馬良」、NPU「達芬奇アーキテクチャ」などの中核演算ユニットを備え、大容量ファイルの読み込み、マルチタスク処理、グラフィックスレンダリング、端末側AIなどの性能を大幅に向上させたとしている。
論理折り畳み技術は、チップ内部の計算ユニットを平面的に並べるのではなく、階層的に配置する考え方だ。従来型の「平屋」に対して、内部構造を「メゾネット」のように立体化することで、ユニット間の垂直方向の通信経路を確保する。
この技術の背景には、半導体の性能向上をめぐる新たな課題がある。
グローバル計算アライアンス事務局の最高技術責任者、苗福友氏は、現在ではモジュール間の通信遅延が高性能コンピューティングチップの効率を制約する主要因になっていると指摘する。単純に半導体のハードウエア資源の量だけで計算性能を測る従来の評価方法では、実際の産業性能を十分に反映できなくなっているという。
同氏によれば、論理折り畳み技術は、アーキテクチャーの革新に加え、チップレットや先端積層など複数の先端技術を組み合わせ、通信遅延という新たな軸から計算性能を再構築する試みだ。半導体産業にとって、新しい性能向上の方向性を示す技術として注目される。
中国科学院の科学技術論文プレプリントプラットフォームで公開された論文では、ファーウェイ董事で半導体事業部門トップの何庭波氏が「麒麟9050 Pro」の性能について説明している。

実測結果によると、前世代の「麒麟9030 Pro」と比較して、麒麟9050 Proのトランジスタ密度は1平方ミリメートル当たり約1億5500万個から約2億3800万個へ増加したという。
何氏は、この増加幅について、従来の幾何学的な微細化によって過去3年間に達成した成果の合計に相当すると説明している。
さらに、平面型プロセスを採用した前世代製品と同等の性能条件で比較すると、実際の負荷を用いたベンチマークテストにおいて、NPU、GPU、CPUの性能コアにおける消費電力をそれぞれ66%、58%、41%削減したとしている。
何氏は論文で、「今後10年間の評価基準は、チップがどれだけ速く『走る』かではなく、どれだけ低い消費電力で『走る』かになる」との見方を示した。
「折り畳みによってチップが熱くなると考えていたが、巧みに折り畳みを利用することで、むしろチップを冷却できる」
こうした設計思想は、微細化だけに依存してきた従来の半導体性能向上とは異なるアプローチとして位置づけられる。
今回の新チップについて、国研新経済研究院の創設院長でスマート経済首席専門家の朱克力氏は、単なるスマートフォン向けチップの世代交代ではなく、中国のコンシューマーエレクトロニクスと半導体産業にとって象徴的な産業突破だと評価する。
スマートフォン産業にとっては、ハイエンド端末の主要チップを海外に依存してきた状況に変化をもたらす可能性がある。チップ、端末、OSを一体化したハード・ソフト協調のモデルを示すことで、中国メーカーがハードウエアのスペック競争だけに頼らず、システムやエコシステム全体で差別化を図るための一つのモデルになるとみられる。
一方、半導体産業にとって最大の意味は、先端技術の研究開発だけではなく、それを大規模な商用製品として実装するところまで到達した点にある。
朱氏は、外部からの技術的制約が存在する中でも、システム設計やアーキテクチャーの革新によって、いわゆる「ポスト・ムーア時代」に向けた独自の技術ルートが現実的に成立することを示したと指摘。国内半導体産業全体にとって、大きな自信につながるとの見方を示している。
現在、中国の半導体産業は大きな転換点を迎えている。中国では新たな生産力の育成が進み、巨大な国内市場が国産チップの試験、改良、量産化を支える土壌となっている。また、人材、資本、政策面での支援も拡大し、半導体のサプライチェーン全体の能力も徐々に強化されている。
その一方で、半導体製造装置や主要材料など、一部の重要分野では依然として弱点が残る。ハイエンドチップの供給不足や、高度な複合型人材の不足といった課題も解消されていない。
さらに、半導体産業は研究開発への巨額投資を必要とする一方、投資回収までの期間が長い。産業の成長を急ぐあまり、企業や地域が同じ分野に過剰投資し、重複した設備投資を行うことへの懸念もある。
朱氏ら専門家は、中国半導体産業が持続的に成長するためには、一つの技術だけを集中的に強化する「単点突破」ではなく、弱点の補強と強みの強化を同時に進める必要があると提言している。
具体的には、実際の製品や市場の需要を起点として、半導体メーカー、端末メーカー、ソフトウエア企業など川上・川下の連携を強化することが重要になる。また、限られた資源を効率的に配分し、重要なボトルネックとなっている技術に集中的に取り組むことも求められる。
同時に、産業エコシステムの構築と人材育成を進め、高水準の対外開放を維持することも不可欠だ。産業チェーンの安全を確保しながら国際的な技術・人材交流を深化させ、世界の人材や技術資源を活用することが、長期的な競争力につながる。
資本市場についても、短期的な利益を追うのではなく、長期的な研究開発を支える資本を呼び込む仕組みが必要になる。
ファーウェイの「麒麟9050 Pro」は、一つの新型スマートフォン向けチップにとどまらず、中国半導体産業が微細化だけに依存しない新たな性能向上の道を模索していることを象徴する存在となった。今後、論理折り畳みをはじめとする新たな半導体アーキテクチャーが、どこまで実際の製品性能や産業競争力につながっていくのかが注目される。
(中国経済新聞)
