TSMC、1.4nm「A14」量産を前倒しへ――台湾・中科で新工場建設が加速

2026/09/10 12:50

台湾積体電路製造(TSMC)の次世代1.4nm級プロセス「A14」をめぐり、量産開始に向けた動きが急速に進んでいる。台湾・台中市の中部科学園区(中科)では、A14向けとなる4棟の新工場建設が進行しており、第1工場「P1」は2027年4月にも試運転を開始し、同年下期の量産入りを目指す計画だ。

当初、A14の量産開始は2028年とされていたが、開発や工場建設が想定以上のペースで進んでいることから、一部生産能力が前倒しで立ち上がる可能性が出てきた。

中科管理局によると、TSMCは中科第2期の先端プロセス拠点で4棟の1.4nm級工場を計画している。建設は2025年10月に始まり、約2,000人の作業員が昼夜を問わず工事を進めている。

第1工場となるP1はすでに鉄骨構造の施工を終え、現在は床や外壁の工事が進んでいる。2027年初頭の建屋完成を予定しており、同年4月には試運転に入る見通しだ。さらに2027年下期には量産を開始できる可能性がある。

TSMCは工場敷地内に2棟の仮設オフィスを設置する計画も中科管理局に申請している。2027年4月の完成を予定し、稼働開始時には5,400人超の運営・外注スタッフが入るとみられている。

第2工場のP2についても、すでに基礎工事が始まっている。コンクリート打設などを経て鉄骨工事へ移行する予定で、2027年10月の完成を目指す。

P3工場はすでに建築許可を取得しており、P4についても建築許可を申請中だ。4工場は約半年ずつずらして建設される計画で、P3は2028年第2四半期、P4は同年第4四半期の完成を予定している。

4工場がすべて稼働すれば、関連する従業員数は9,000~1万人規模に達する見込みだ。

注目されるのは、工場建設だけではない。TSMCが開発を進めるA14プロセスそのものについても、量産に向けた進捗が非常に速い。

A14はTSMCの次世代ロジックプロセスで、AIやHPC(高性能コンピューティング)、スマートフォンなどを主なターゲットとする。TSMCによれば、先行する2nm世代「N2」と比較して、同じ消費電力で最大10~15%の性能向上、同じ性能で25~30%の消費電力削減を実現する。また、ロジック密度は20%以上向上するとされる。

A14では、TSMCが培ってきたGAA(ゲート・オール・アラウンド)型ナノシートトランジスタ技術をさらに進化させる。N2がTSMCにとってGAAナノシートを本格採用する最初の世代だったのに対し、A14は第2世代のGAAデバイスとなる。

このため、N2の開発・量産で蓄積したトランジスタ設計、プロセス最適化、製造ノウハウをA14に生かせることが、開発スピードを押し上げているとみられる。

2026年7月の決算説明会でTSMCは、A14の開発が過去3カ月で大きく進展し、同じ研究開発段階にあったN2を大幅に上回るペースで進んでいると説明した。

TSMCの魏哲家CEOによれば、A14では内部製品試作におけるデバイス性能が目標値の約90%に達し、256Mb SRAMの歩留まりも約90%に近づいているという。

2026年4月時点では、デバイス性能が目標値の85%超、256Mb SRAMの歩留まりが80%超だった。わずか約3カ月で、デバイス性能は約5ポイント、SRAM歩留まりは約10ポイント改善した計算になる。

これはN2の開発時と比べても速い進展だ。もっとも、256Mb SRAMの高い歩留まりが、そのまま商用CPUやGPUなどの製品歩留まりを意味するわけではない。SRAMテストチップは高い繰り返し性を持つ構造であり、主に欠陥密度やプロセス均一性を評価するものだからだ。

それでも、量産開始までなお約2年半を残した段階で、デバイス性能とSRAM歩留まりがともに90%近くまで向上していることは、A14の成熟が非常に速いことを示す重要な指標といえる。

TSMCは現在、A14の量産開始を2028年としている。しかし、プロセス開発が順調に進み、顧客側の設計準備も整えば、量産立ち上げを前倒しできる可能性がある。特に中科のP1工場が2027年4月にも試運転に入り、同年下期から量産に移行できれば、工場側のロードマップも従来想定より早い。

ただし、「2027年下期に量産」と「A14が正式にHVM(High Volume Manufacturing=大規模量産)へ移行する」ことは必ずしも同義ではない。初期段階では限定的な生産能力からスタートし、歩留まりや顧客製品の認証を確認しながら段階的に生産量を引き上げる可能性もある。

それでも、A14が従来計画より早く量産体制に入れば、TSMCにとってはAI半導体を中心とする先端プロセス需要を取り込むうえで大きな意味を持つ。

1.4nm工場の年間売上高は5,000億台湾ドル規模か

中科管理局によれば、4棟の1.4nm新工場が完成して量産に入った場合、年間売上高は約5,000億台湾ドルと見積もられている。

ただし、これは現時点での試算にすぎない。実際の売上規模は、台湾・新竹の宝山第2工場など、TSMC全体の1.4nm世代の生産能力や顧客需要が明確になってから確定するとみられる。

中科管理局は、現在のプロセスコストや市場需要を考慮すると、5,000億台湾ドルという数字はむしろ控えめな可能性もあるとみている。

TSMCのA14世代の先には、さらにA13、A12が控えている。

A13はA14をベースとした発展型プロセスで、97%の光学的微細化(Optical Shrink)によってダイ面積を約6%削減する。設計とプロセスの協調最適化(DTCO)によって性能と電力効率も改善するほか、A14との設計ルールを完全に後方互換とすることで、既存IPの移行を容易にする。量産開始は2029年が予定されている。

さらにA12では、TSMCが第2世代の革新的な背面電源供給技術を導入する計画だ。

背面電源供給では、電源配線をチップ裏面に移すことでIRドロップを抑え、チップ表面の金属配線層を信号配線に集中させることができる。これにより、ロジック密度や電力効率のさらなる向上が期待される。

特に消費電力の大きいAIアクセラレーターやHPC向けでは、トランジスタの微細化だけでなく、電源供給や配線技術そのものが性能を左右する。そのため、A12は将来のAIインフラを支える重要なプロセスになる可能性がある。

AI時代の主導権を左右するA14。TSMCのA14は単なる「1.4nmへの微細化」ではない。N2で培ったGAAナノシート技術をさらに成熟させ、NanoFlexを「NanoFlex Pro」へ進化させることで、性能、電力効率、設計柔軟性を同時に高めることを狙っている。

AI処理の需要が急拡大する中、半導体メーカーにとって重要なのは、単純なトランジスタ密度だけではなく、同じ電力でどれだけの演算性能を引き出せるかという「電力当たり性能」だ。

A14がN2を上回る開発スピードを維持し、さらに中科での工場建設も前倒しで進めば、TSMCは2027年後半にも一部の1.4nm生産を開始できる可能性がある。

正式なA14の量産開始時期は2028年とされているものの、現在の開発・建設状況を見る限り、TSMCの1.4nm世代は当初想定より早く市場に姿を現す可能性が高まっている。

AI半導体をめぐる競争が激化するなか、TSMCがA14をどのタイミングで大規模量産へ移行できるかは、NVIDIAなどの主要顧客だけでなく、Samsung ElectronicsやIntelを含む次世代半導体競争の勢力図にも影響を与えそうだ。

(中国経済新聞)