中国の中小学校で、大学院修了者の教員が急速に増えている。高等教育管理データ研究機関の麦可思(MyCOS)の調査によると、2024年時点で中国の中小学校の専任教員のうち、修士・博士の学位を持つ教員は合わせて86万人を超えた。若い教員の職業満足度や待遇も改善しており、人工知能(AI)を授業に取り入れる動きも広がっている。
麦可思のデータによると、大学を卒業して公立の小中学校で教員となった人の就業環境は近年、継続的に改善している。
2021年卒から2025年卒までの5つの世代を比較すると、卒業半年後の月収は2021年卒の4677元(約9万7000円)から、2025年卒では5357元(約11万1000円)へと上昇した。就業満足度も82%から88%へと6ポイント上昇している。
小学校、中学校の教員ともに収入と就業満足度が上昇しているが、特に目立つのが満足度の改善だ。中学校教員の就業満足度はこの5年間で7ポイント上昇し、小学校教員の3ポイントを上回った。
この調査は、2021~2025年卒の大学生を対象に、卒業半年後の教育・就業状況を追跡したもの。それぞれ2022年3月から2026年3月にかけて実施され、全国の本科卒業生から12万5000人、13万5000人、14万3000人、17万1000人、19万5000人の回答を集めた。対象となったのは522の本科専攻に及ぶ。
中国では、優秀な人材を中西部地域の学校に呼び込むことも、教師人材の強化に向けた重要な政策課題となっている。
実際、大学卒業生の就職先を見ると、中西部地域は教員を目指す本科卒業生にとって重要な進路となっている。
麦可思の調査では、直近5つの卒業世代について、小学校教員として就職した本科卒業生のうち、中西部地域で働く人の割合は54.7%から59.6%へ上昇した。中学校教員でも58.6%から60.1%へと増加している。
都市部への人材集中が課題となる中、中西部の学校に若い大学卒業生が流入していることは、地域間の教育格差を縮小するうえでも注目される動きだ。
中国教育部が2024年まで更新した教育統計を第一財経が整理したところ、中小学校の専任教員のうち、博士研究生の学歴を持つ教員は5910人、修士研究生の学歴を持つ教員は85万5634人に達した。
両者を合わせると、大学院レベルの学歴を持つ中小学校教員は86万人を超える計算になる。
特に近年は、有名大学の修士・博士課程修了者が中小学校、とりわけ中学校の教員になるケースが増えている。北京、上海、深圳、広州、杭州などの大都市に加え、経済発展が進む地方都市や県の重点中学校でも、高学歴人材の採用が目立つ。
名門大学出身者が重点校に集中、その象徴的な例が深圳中学だ。同校の紹介によると、博士号を持つ教員は100人以上、清華大学や北京大学を卒業した教員は150人以上いる。また、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学など海外のトップ大学出身者も100人以上在籍しているという。
さらに、正高級教師、特級教師、各種競技の金メダル指導者、優秀なクラス担任など、専門性の高い人材も30人以上いるとされる。
こうした重点校への高学歴人材の集中は、中国の教育界で進む大きな変化の一つとなっている。
厦門大学経済学系の丁長発副教授は、こうした現象の背景として、中国の経済発展と都市間の人材獲得競争を指摘する。
北京、上海、広州、深圳、杭州、蘇州、厦門などの都市では、10年以上前から大学院修了者を中小学校の教員として積極的に採用してきたという。
近年では、経済的に豊かな中小都市や県も、教員への編制(公務員に準じた安定した雇用枠)や住宅取得などの補助、赴任・定住支援金など、比較的手厚い待遇を用意することで、大学院修了者を呼び込んでいる。
また、政策面での後押しを受け、現職の小中学校教員が教育学などの修士・博士課程に進学するケースも増えている。
教員の高学歴化だけでなく、若い世代のデジタル能力も向上している。麦可思の調査によれば、新世代の若手教員は、教員として働き始めてからの職業体験を改善させながら、デジタル・リテラシーも高めている。さらに、人工知能(AI)が日常の授業や教育活動に入り始めている。
中国では教育現場のデジタル化が進む中、若手教員を中心にAIなどの新たな技術を授業準備や教材作成、教育活動に活用する動きが広がっている。
大学院修了者の増加とデジタル技術の普及が同時に進むことで、中国の中小学校では、従来型の「安定した就職先としての教員」から、より専門性や研究能力、デジタル能力が求められる職業へと、教員の位置づけが変わりつつある。
中国の中小学校における教員の高学歴化は、単なる学歴競争にとどまらない。学校側にとっては教育の質や学校ブランドの向上につながる一方、都市部の有力校に優秀な人材が集中することで、地域間の教育格差を新たに生む可能性もある。
今後、中国がどのようにして高学歴の教員を中西部や地方の学校にも配置し、教育人材の地域格差を縮小していくのかが、教育政策上の重要な課題となりそうだ。
(中国経済新聞)
