韓国で街角に溶け込むように広がるコンビニエンスストアのブランド「CU」が、いよいよ中国市場に本格的に乗り出してきた。公式SNSで中国市場向けオンラインストアのオープン宣言を行い、同時に実店舗の出店準備も着々と進めているという。韓国では約1万8600店舗を展開し、「Be Good Friends(良き友人であれ)」を理念に掲げる同ブランドは、日常の利便性を高める自社ブランド商品の充実や、自助式ラーメン機などの工夫で知られる。
CUを運営するのは韓国のBGF Retailグループだ。在韓では身近な存在として定着し、価格競争力のある自社商品が店内の大きな割合を占めている。中国での初動は、まずは電子商取引(EC)プラットフォームから始める「オンライン先行」戦略を取っている。これは決して珍しいアプローチではない。かつてドイツのディスカウントストア、Aldi(オレオク、奥楽齊)が中国進出時に同様の手法を用いた例がある。実店舗の運営コストが高まる中、まずは市場の反応を低コストで探り、消費者の嗜好や価格帯を把握してから本格的な実体展開に移るーーこれは賢明な試行錯誤と言えるだろう。

中国の小売業は現在、厳しい環境に置かれている。実体店舗は賃料や人件費の上昇、ECの台頭による客足の流出などで経営圧力が高く、特に伝統的な小売業態は苦戦を強いられている。その中で、即時消費を重視するコンビニエンスストア業態は相対的に成長を続けている。中国連鎖経営協会とKPMC中国が共同で発表した『2026年中国コンビニエンスストア発展報告』によると、2025年の世界コンビニ市場規模は9820億ドルを突破し、2026年から2030年にかけて年平均9・4%の成長が見込まれている。中国国内でも社会消費品小売総額が初めて50兆元(約1185兆円)を突破する中、コンビニは生活必需サービスとして強い回復力を示した。トップ10企業の新店開設数は1万店を超え、コミュニティ型店舗の比率が高まり、24時間営業店舗も増加傾向にある。単店日商や坪効率は小幅に低下したものの、精緻な運営により毛利率・純利益率がわずかながら向上しているという。
こうしたデータからも、中国市場の潜在力は明らかだ。CU側もこの成長の波を見据えての参入であろう。しかし、「後発組」としてのハードルは決して低くない。現在、中国ではファミリーマート、ローソン、セブン-イレブン、便利蜂、快客、好德などの国際・ローカルブランドが既に全国規模で展開しており、中には数千店舗を擁するものもある。また、中国石油化工(中石化)傘下の易捷コンビニは2万店超のネットワークをガソリンスタンド拠点に築いている。こうした先行者の存在下で、CUが優位性を築くには、立地選定やコストコントロールが極めて重要になる。
CUの強みは、韓国本国で磨かれた自社ブランド開発力とサプライチェーン管理にある。韓国では自社商品の比率が高く、価格競争力で支持を集めている。しかし、中国市場では事情が異なる。韓国からの輸入商品中心では輸送コストがかさみ、現地調達に切り替えれば新たなサプライチェーン構築が必要となる。これは短期で解決できる課題ではない。
また、SKU(商品品類数)も現時点ではまだ限定的で、主に韓国特色の食品が中心となっている。単価は数元から数十元(数百円)と手頃だが、品揃えの拡充が今後の鍵となろう。
参考になるのが、奥楽齊の中国展開だ。同社はECで市場をテストした後、実体店舗を着実に増やし、独自の高コストパフォーマンス自社ブランドを多数開発した。2023年以降は年間平均40%のペースで店舗を拡大し、2026年3月時点で100店舗に達している。消費者の粘着性を獲得した好例である。CUがこれを再現できるかどうかは、まだ未知数だ。ブランドの定位や運営手法の違いも影響するだろう。
日本でもコンビニはただの買い物場所ではなく、生活インフラとして進化を続けてきた。24時間営業、充実した弁当・総菜、公共料金支払いなど、地域に根ざしたサービスが支持を集めている。中国でも同様に、コンビニは「日常の小さな幸せ」を支える存在となり得る。CUが韓国での成功体験を活かしつつ、中国消費者のニーズに柔軟に適応できれば、新たな風を吹き込む可能性はある。
ただ、成功の鍵は「現地化」にある。韓国式の自助サービスや商品ラインナップをそのまま持ち込むだけでは不十分だ。中国の地域差、消費者層の多様性、デジタル決済の浸透度などを深く理解し、商品開発や店舗設計に反映させる必要がある。
(中国経済新聞)
