風力・太陽光設備の大量退役時代へ 中国で4200億元リサイクル市場が始動

2026/06/12 11:00

中国でグリーン・低炭素社会への転換が加速するなか、風力発電や太陽光発電設備のリサイクル・再利用が新たな成長産業として注目を集めている。これまで補完的な産業と位置付けられていた設備リサイクルは、今や環境保全、資源安全保障、さらには国際競争力にも関わる重要な戦略分野へと変貌しつつある。

中国では過去20年以上にわたり再生可能エネルギー産業が急速に発展してきたが、初期に導入された太陽光パネルや風力発電設備が相次いで耐用年数を迎え始めている。これに伴い、巨大な循環経済市場の形成が期待されている。

中国物資再生協会の許軍祥会長によると、2025年末時点で中国の風力・太陽光発電設備の総設備容量は18億4000万キロワットを超え、火力発電設備容量を初めて上回った。一方で、設備の大量退役時代も到来しており、2025年の風力・太陽光設備の累計退役量は1300万キロワットを超え、前年より70%増加したという。

今後も再生可能エネルギーの導入拡大が続く見通しだ。中国政府は2035年までに風力・太陽光発電設備容量を2020年比で6倍以上、最大36億キロワットまで引き上げる目標を掲げており、その一方で将来的な設備更新・廃棄需要も急増するとみられている。

清華大学蘇州環境イノベーション研究院の么新副院長は、太陽光パネルの寿命を25年、風力発電設備を20年と仮定した場合、2030年には中国の廃棄太陽光パネルが100万トンを超え、風力設備から発生する廃材も鋼材約300万トン、複合材料約50万トンに達するとの試算を示した。

市場規模も急速な拡大が予想されている。中国グリーンサプライチェーン連盟・太陽光リサイクル産業発展協力センターは、設備の早期退役シナリオを前提にすると、2030年の太陽光パネル累計退役量は400万トン、2050年には2300万トンに達すると予測。その結果、太陽光パネルリサイクル市場は2030年に260億元、2050年には4200億元規模へと成長する可能性があるとしている。

こうした市場拡大の背景には経済的な魅力だけでなく、環境保護の必要性もある。使用済み太陽光パネルにはガラス、アルミニウム、シリコン、銀、銅、ガリウム、インジウムなど再利用可能な資源が含まれる一方、不適切な埋立処分や焼却処理を行えば、有害物質が放出され、土壌や大気を汚染する恐れがある。

さらに、欧州連合(EU)が循環経済関連法案の整備を進めていることも、中国企業にとって大きな外圧となっている。EUは再生材料の利用比率引き上げやサプライチェーンの環境基準強化を進めており、中国から輸出される機械・電機製品や自動車部品などにも再生材料使用に関する認証が求められる見込みだ。

一方で、業界には多くの課題も残されている。

まず、回収・リサイクルの仕組みが十分に整備されていない。発電事業者とリサイクル事業者の間で安定した協力体制が構築されておらず、設備回収の流れが分断されているケースが少なくない。

また、採算性の低さも深刻だ。中国の大規模太陽光発電所の多くは西北部や華北地域の山岳地帯や砂漠地帯に立地しており、設備撤去や輸送コストが高額になる。回収による収益が処理コストを下回るケースもあり、多くの企業が収益確保に苦戦している。

加えて、違法な小規模解体業者による価格競争も問題となっている。正規企業の処理コストが1トン当たり500~700元程度であるのに対し、環境対策を講じない違法業者は300元以下で処理できるため、市場の健全な発展を阻害しているとの指摘がある。

技術面でも課題は多い。太陽光パネルの高価値部材を効率的に分離・回収する技術はまだ発展途上であり、風力発電のブレードに使用される複合材料の再利用技術も十分に確立されていない。高額な設備投資や環境負荷への対応も求められている。

こうした状況を受け、専門家からは国有企業への回収責任の明確化や、リサイクル産業全体の技術ロードマップ策定、業界標準の整備などを求める声が上がっている。

中国の再生可能エネルギー産業は、設備導入拡大の段階から「大量退役・循環利用の時代」へと移行しつつある。今後、数千億元規模へ成長すると見込まれるリサイクル市場をいかに健全に育成するかが、脱炭素社会実現に向けた重要な課題となりそうだ。

(中国経済新聞)