中国製ヒト型ロボットが急成長する背景

2026/05/25 10:15

中国・習近平政権が国家戦略として「ヒト型ロボット(人型ロボット)産業」を重点育成対象に位置づけたことで、この分野が爆発的な成長を遂げている。2025年を「量産元年」と位置づけ、メーカー数は140社を超え、世界出荷台数の8割以上を中国企業が占めるまでに急拡大した。そして2026年は「商用化元年」とされ、工場・物流・高齢者施設など実社会への本格導入が加速している。能力の飛躍的向上と低価格化が進む背景には、政府の強力な政策支援、優秀人材の集中、EV(電気自動車)技術とのシナジーがある。

 まず、急成長の背景を振り返る。中国政府は第14次5カ年計画(2021~25年)以降、ロボット産業を「未来を担う新興産業」と位置づけ、2024年以降は「具身智能(エンボディドAI)」を国家重点に据えた。工信部は北京・上海にエンボディドAI・人型ロボットイノベーションセンターを設置し、基礎ソフト「開物」や標準化技術委員会を整備。地方政府も独自支援を展開し、研究開発から量産・実証までを一体化して推進している。これにより、2025年には完成品メーカー140社超、発表製品330機種以上という規模に達した。市場調査会社トレンドフォースによると、2025年の中国における人型ロボット出荷台数は約1万4400台で、世界全体の84・7%を占め、市場規模は約356億円に達した。2026年は前年比94%増の生産増が見込まれ、中国勢の優位はさらに鮮明になるだろう。

 Unitree Robotics(宇樹科技)

この成長を牽引するのは、Unitree Robotics(宇樹科技)、AGIBOT(智元機器人)、ROBOTERA(星動紀元)、UBTECH Robotics(優必選科技)などのトップ企業だ。Unitreeは浙江省に本拠を置き、2025年の出荷台数5500台超で世界シェア約32%を誇る業界リーダー。主力製品のヒト型エージェント「G1」は、折りたたみ可能でダイナミックな二足歩行・バランス制御に優れ、価格は約121万円(9・9万元~)からと手頃。2025年9月時点で社員480人、売上高は前年比4・35倍の約393億円を記録し、今年は新規株式公開(IPO)で約966億円を調達予定だ。AGIBOTは上海拠点のユニコーン企業で、2025年に5000台超を出荷(一部調査でシェア39%)。累計生産1万台を突破し、2026年4月には江西省のタブレット工場生産ラインに「G2」を世界初の精密民生電子機器量産導入を実現。ベルトコンベアへの部品着脱作業を1時間あたり310台処理、成功率99・9%、140時間超の連続稼働を達成し、2026年第3四半期までに100台規模へ拡大する計画だ。

 ROBOTERA(星動紀元)

ROBOTERA(北京星動紀元)は物流特化で急成長中。中国郵政やSFホールディングス(順豊)と連携し、全国10カ所以上の物流センターに導入。24時間安定稼働を実現し、一部拠点では人間の作業効率85%以上を記録。2026年4月以降は1000台規模の納入を開始し、最近2億ドル(約320億円)超の資金調達も発表した。UBTECHも1000台規模の出荷で上位を維持し、教育・サービス分野で実績を積む。これら中国企業は世界出荷上位を独占し、米テスラの0ptimus(数十~百台規模)や欧米勢を大きく引き離している。

 AGIBOT(智元機器人)

人材面での熱狂も特筆すべきだ。中国人材会社の調査では、2025年1~5月のヒト型ロボット関連求人件数が前年比409%増。6割以上が技術職で、ソフトウェア開発者の平均月給は約58万円、5年以上の経験者では約77万円に達する。中国都市部公務員の平均給与(約23・8万円)と比べても破格の高待遇だ。Unitreeでは月給700万円クラスの開発者が在籍し、UBTECHロボティクスは開発責任者に最大年収29億円を提示する求人も話題となった。清華大学など名門大学の優秀卒生が殺到し、業界トップ企業では高額報酬で人材を集めている。こうした「ロボット人材戦争」は、AI大規模モデルとロボット動作の融合を加速させ、能力向上の原動力となっている。

 実用化の最前線では、すでに「デモ段階」を超えた商用展開が進む。江西省のタブレット工場でのAGIBOT G2導入は、世界で初めて消費者電子機器の精密生産ラインにヒト型ロボットを恒久配置した事例。既存の人間用レイアウトを36時間で統合し、人間と同じ道具・空間で作業可能とする柔軟性が強みだ。物流分野ではROBOTERAが中国郵政・SFと連携し、仕分け・運搬・スキャン作業を担う。24時間無休稼働で人手不足を補い、2026年はさらに大規模展開が見込まれる。

 高齢化社会対策としても注目される。高齢者施設では生活支援・リハビリ・マッサージ用途のロボットが導入され、介護負担軽減に寄与。春節晩会でのパフォーマンスや人型ロボットハーフマラソン、ボクシングデモなど、娯楽・スポーツ分野での活躍も国民の関心を高めている。工信部は「人型ロボットの十大潜在活用シーン」として、製造・物流・家庭・医療・教育などを挙げ、2026年を「実用化元年」と位置づけている。

(中国経済新聞)