米半導体大手クアルコムは7月29日(米国時間)、2026年度第3四半期(4~6月期、6月28日終了)の決算を発表した。売上高は前年同期比4%増の99億4,700万ドル(約1兆5,915億円、1ドル=160円換算)となり、市場予想(96億7,000万ドル)を上回るとともに、会社予想の上限に達した。一方、純利益は20億200万ドル(約3,203億円)と前年同期の26億6,600万ドル(約4,266億円)から25%減少し、「増収減益」の決算となった。
希薄化後1株当たり利益(EPS)は1.87ドル(約299円)。Non-GAAPベースの純利益は23億5,600万ドル(約3,770億円)で前年同期比23%減、EPSは2.21ドル(約354円)だった。
半導体コスト上昇が利益を圧迫
クアルコムは、ウエハー製造、組み立て、テスト、先端パッケージング、メモリー、その他材料など、半導体製造に関わるコストが全面的に上昇していることが利益減少の主因と説明した。
主力の半導体事業(QCT)の税引前利益率は26%と前年同期の30%から4ポイント低下。技術ライセンス事業(QTL)の利益率も71%から69%へ低下した。
クリスティアーノ・アモンCEOは「コストが上昇すれば価格も上昇する。現在の値上げは急激なコスト増加を価格へ転嫁するためのものだ」と説明した。
同社はすでに7月24日、顧客向けに通知を送り、9月1日から全ての半導体製品を2桁%値上げする方針を明らかにしている。
スマホ向け低迷、車載向けは61%増
主力のQCT事業の売上高は85億400万ドル(約1兆3,607億円)で前年同期比5%減となった。
このうちスマートフォン向け半導体は50億8,600万ドル(約8,138億円)で20%減少し、市場低迷の影響を受けた。
一方、車載向け半導体は15億8,800万ドル(約2,541億円)と前年同期比61%増加し、23四半期連続で2桁成長を達成。市場予想の約14億ドルを大きく上回った。
決算発表と同時に、クアルコムはBMWと長期契約を締結し、今後10年間にわたりデジタルコックピットや先進運転支援システム(ADAS)向け半導体を供給すると発表した。
IoT(モノのインターネット)事業も18億3,000万ドル(約2,928億円)と前年同期比9%増となり、産業機器やスマートグラス、ロボット向け需要が成長を支えた。
一方、技術ライセンス事業(QTL)の売上高は12億7,800万ドル(約2,045億円)で前年同期比3%減だったものの、依然として69%という高い利益率を維持した。
AIデータセンター事業を成長の柱に
スマートフォン市場の停滞やApple向け売上比率の低下を見据え、クアルコムはAIデータセンター分野への投資を加速している。
アモンCEOは、次期iPhoneで同社部品の採用比率が従来予想の20%を大きく下回る見通しを示した一方、「Apple向け売上の一部をデータセンター事業で補っている」と述べた。
同社は2027年度にデータセンター関連売上高50億ドル(約8,000億円)の達成を目標としており、6月の投資家説明会ではAIアクセラレーター、CPU、メモリー、ラックサーバーなどの製品群を公開している。
また、第3四半期にはAIプログラミング技術企業Modularを買収し、8月には生成AI向けソフトウェア基盤を発表する予定だ。
さらに、2029年度までにスマートフォン以外の事業売上高を400億ドル(約6兆4,000億円)へ拡大する目標も掲げている。
第4四半期も利益率低下続く見通し
2026年度第4四半期について、売上高は97億~105億ドル(約1兆5,520億~1兆6,800億円)と市場予想並みを見込む。
内訳はQCT事業が84億~90億ドル(約1兆3,440億~1兆4,400億円)、QTL事業が12億~14億ドル(約1,920億~2,240億円)の見通し。

一方、Non-GAAPベースのEPSは2.05~2.25ドル(約328~360円)と、市場予想の2.36ドルを下回った。GAAPベースのEPSは1.22~1.42ドル(約195~227円)を見込んでいる。
値上げでも短期的な収益改善は不透明
第3四半期には株主還元として総額23億ドル(約3,680億円)を実施。このうち、現金配当は9億7,300万ドル(約1,557億円、1株当たり0.92ドル=約147円)、自社株買いは14億ドル(約2,240億円)だった。
一方、利益見通しが市場予想を下回ったことを受け、クアルコム株は時間外取引で5%超下落した。
同社は9月から全製品の価格引き上げを実施し、利益率を従来水準へ戻す考えだ。しかし、半導体製造コストの上昇とスマートフォン市場の低迷が続くなか、値上げだけで短期的な収益改善を実現するのは容易ではないとの見方が広がっている。
(中国経済新聞)
