兆ドル市場が急拡大――「ペットは家族」が生む新たな消費の波

2026/02/24 12:30

世界のペットケア市場が、いま大きな拡大局面を迎えている。データによれば、2025年に2,435億米ドルだった市場規模は、2035年には4,835億米ドルへとほぼ倍増する見通しだ。猫や犬が「家族」の一員として位置づけられるようになり、消費はフードやトイレ用品といった基礎的な需要を超え、栄養補助食品や健康食品、さらには人工知能(AI)搭載のスマート機器にまで広がっている。

この大きな潮流を前に、中国発のブランドも素早く動き出している。

まず、悠派科技。もともとは受託製造を手がけていた企業だが、ペット用尿パッドという一見地味な分野に特化し、米アマゾンで月間5万点以上を販売。市場シェア19%を獲得し、年商10億元(約225億円)規模の自社ブランドへと成長した。主食フード市場の激しい価格競争に参入するのではなく、「日常消耗品の品質を徹底的に高める」戦略が成功を支えた。

設立からわずか2年のLitPet立陪は、競争の激しい主食市場を避け、ペット向けの栄養補助食品・健康食品に特化。単一商品で3か月間に100万香港ドルを売り上げた。ペットの高齢化が進むなか、病気になってから治療するのではなく、日頃から健康を維持するという意識の高まりを的確に捉えた形だ。

さらに、2024年創業のSATELLAIは、人工知能を搭載したスマート首輪という分野に照準を合わせた。発売から3か月足らずで売上は数百万米ドルに達し、米アマゾンの関連カテゴリーで首位を獲得。位置情報の把握や健康状態のデータ管理といった機能は、「かわいい存在」から「守るべき家族」へと変化した飼い主の意識を象徴している。

「小さな分野を極める」戦略

これらの企業に共通するのは、主食という激戦分野を避け、市場を細分化したうえで特定の分野を徹底的に深掘りする戦略だ。巨大市場のなかであえて小さな分野に集中し、品質とブランド力で差別化を図る。いわば「小さな分野で大きな市場を狙う」発想である。

ペット関連消費の本質は、単なる合理的支出というよりも、感情に基づく支出に近い。家族に向ける愛情の延長線上にあるため、価格よりも「安心」「健康」「長生き」といった価値が優先される。その結果、高付加価値商品への支払い意欲も高まりやすい。

日本市場への示唆

日本でもペットは大切な家族の一員だ。少子高齢化が進むなか、ペットに向けられる愛情と支出は今後も堅調に推移するとみられる。一般的に、犬や猫1匹あたりの月間支出は1万~3万円程度とされるが、医療費や保険料、プレミアムフード、スマート機器などを含めれば、それ以上になるケースも少なくない。

問われているのは、「どの分野に参入するか」ではなく、「どれだけ価値を高められるか」だろう。

拡大を続けるこの巨大市場。あなたや身近な人は、毎月どのくらいペットに費やしているだろうか。その支出は負担だろうか。それとも、家族への自然な投資だろうか。

(中国経済新聞)