海南自由貿易港、全島封関から1カ月

2026/01/19 08:30

中国・海南自由貿易港が、全島を対象とした「封関運用」(関税管理上の新制度)を開始してから1カ月が経過した。1月18日、税関総署は封関後初となる運営実績、いわば初の「成績表」を公表し、貿易・観光の両分野で制度効果が着実に表れていることが明らかになった。

税関総署によると、封関開始から1月10日までの間に、海外との境界にあたる「一線」で通関・放行された貨物は約1万8,000トンに達した。「ゼロ関税」対象貨物の輸入額は4億6,000万元(約96億6,000万円)、免税額は6,212万8,000元(約13億円)となっている。こうした制度効果を背景に、同期間の海南全島の貨物貿易(輸出入)総額は214億2,000万元(約4,500億円)に達し、前年同期比19.6%増と高い成長を示した。

封関後、海南を訪れる外国人観光客も明確に増加している。元旦連休期間中の出入境客数は前年同期比で20%以上増加し、元旦当日の入境航空券予約数は、海口で3倍超、三亜で5倍超に急増した。

旅行予約サイト「去哪児(Qunar)」のデータによると、2025年12月24日前後には海口行きの国際線航空券が40%以上増加。2026年春節期間中は、海口への国際線航空券数が前年同期比で2倍以上に拡大する見通しだ。主な渡航元は、ロシア、シンガポール、オーストラリア、マレーシア、韓国、タイ、カザフスタンなどとなっている。三亜市の大東海観光エリアでは、冬に入って以降、ロシア人観光客が1日平均3,000人以上訪れており、国際観光地としての存在感が高まっている。

一方、国内観光客の動きも活発だ。海南省内でウェルネス型ホテルを運営する海南美全康養ホテルの苗珍子総支配人は、「東北地方からの宿泊客が多く、心身を癒やすスパが特に人気です。中高年層には中医学を取り入れた健康・リハビリ体験が好評で、火龍罐(温熱療法)や艾灸(お灸)チェアなどが支持されています」と話す。ホテル側は、手作り体験や絵画ワークショップなども取り入れ、滞在型観光の魅力向上を図っている。

観光需要の高まりは、三亜や海口といった主要都市にとどまらず、万寧、瓊中、五指山など島内各地にも広がっている。第三者データによると、新年最初の1週間で宿泊需要が最も高かった都市は三亜、海口、万寧で、特に万寧のホテル稼働率は前年同期比44%増となった。

さらに、瓊中、五指山、屯昌では、ホテル予約数がそれぞれ84%、73%、60%増と大幅に伸びており、観光の裾野が着実に広がっている。

免税政策が集客を後押し、1日平均2.4万人が買い物。封関運用による観光客への最大のメリットの一つが、免税ショッピング環境の拡充だ。現在、海南では平均して1日あたり約2万4,000人が免税ショッピングを利用している。

1月14日に開かれた国務院新聞弁公室の記者会見で、税関総署の王軍副署長は、離島免税商品の品目が45類から47類に拡大され、デジタルカメラ関連機器や小型ドローンなどの電子製品が新たに加わったと説明した。さらに、免税の対象者も「海南島から出国するすべての旅行者」へと拡大された。

封関後から1月上旬までの累計で、免税ショッピング利用者数は58万5,000人、売上額は38億9,000万元(約817億円)に達し、前年同期比でそれぞれ32.4%、49.6%増加した。1日平均の免税売上額は約1億6,000万元(約34億円)と、封関前を上回っている。

封関は海南のヨット産業にも新たな成長機会をもたらしている。元旦には、三亜国際ヨットセンターに所属するすべてのヨットが出航し、多くの観光客が海上から島の景観を楽しんだ。春節に向けては、出航予約や問い合わせが相次いでいるという。封関後、海南で購入するヨットの価格は下落し、交通や観光用途で使用する場合はゼロ関税の適用を受けられる。ブランドによっては、従来より約30%安くなるケースもある。

北京聯合大学観光学院の廖斌副教授は、「封関によって海南はより開放的で国際化が進み、文化・観光産業への波及効果は非常に大きい」と評価する。その一方で、海南が掲げる「国際観光消費センター」「世界水準のリゾート地」という目標を実現するためには、免税ショッピングに依存するだけでは不十分だと指摘する。

今後は、商業・文化・観光・スポーツ・展示会を融合させた多様な観光モデルの構築が必要だという。具体的には、国際スポーツ大会と観光を組み合わせたスポーツツーリズム、演劇や音楽イベントを軸とするエンターテインメント観光、さらには海洋観光、健康・医療観光、宇宙関連観光、教育旅行などの育成が挙げられる。

若年層のニーズに応えるため、深海ダイビングや沖合クルーズ、海釣り大会といった「体験型・参加型」観光の拡充も重要だとしている。

また、海南を国内外を結ぶハブとして機能させるため、基礎インフラやサービスの底上げも課題となる。廖副教授は、入境観光客向けに、決済・予約・案内・免税・交通を統合した「ワンストップ電子サービス」の導入や、国際クルーズ母港の整備を進め、クルーズ観光の本格的な発展を図るべきだと提言している。

全島封関から1カ月。好調なスタートを示す数字の一方で、海南自由貿易港はいま、成長の「量」から「質」への転換という次の段階を迎えつつある。

(中国経済新聞)