世界初の6トン級ティルトローター機、中国で初飛行に成功

2025/12/29 08:30

中国の航空機メーカー・聯合飛機集団は12月28日、同社が自主開発した世界初の6トン級ティルトローター(傾転式回転翼)機「镧影(ランイン)R6000」が、四川省で初飛行に成功したと発表した。今回の成功は、中国がティルトローターという最先端航空分野において、基幹技術で大きな突破を成し遂げたことを示すものであり、同クラス機の産業化に向けた初の大規模実用レベルのソリューションとなる。

ティルトローター機は、ヘリコプターの垂直離着陸・空中停止(ホバリング)能力と、固定翼機の高速巡航・長距離飛行性能を兼ね備えた航空機である。一方で、動力システムはヘリコプターモードと固定翼モードという、性質の大きく異なる二つの飛行形態に対応しなければならず、エンジンの応答性、信頼性、統合制御能力には極めて高度な技術が求められる。この分野では長年、海外のごく一部の国が技術的主導権を握ってきた。

《環球時報》の取材に対し、プロジェクト責任者の趙鳳明氏は、「镧影R6000はヘリコプターモード時で全長約11.8メートル、高さ約5.3メートル、ローター直径は7.5メートル。巡航速度は時速550キロに達し、従来型ヘリコプターのおよそ2倍に相当する」と説明する。最大積載量は2トン、最大航続距離は約4,000キロ、実用上昇限度は7,620メートルと、いずれも同クラスのヘリコプターを大きく上回る性能を備えている。

同機には、中国航空発動機集団が自主開発したAES100ターボシャフトエンジンを搭載。高集積型の電動作動システムと先進的な飛行制御システムを組み合わせることで、垂直離着陸から高速水平飛行への飛行モード切り替えを、滑らかかつ安全に実現する。趙氏は「ヘリコプターと固定翼機、それぞれの長所を融合した“二重モード飛行”のプラットフォームだ」と強調した。

また、镧影R6000は、中国でこれまでに初飛行した最大級のティルトローター機であり、エンジン全体を回転させない独自の傾転ローター軸構成を採用している。この設計により、離着陸時に発生する高温の排気が機体側面や乗降者に影響を及ぼすことを防ぎ、防熱処理を施していない海上プラットフォームでも安全な運用が可能となる。

さらに機体には、機上インテリジェント計測・機体状態監視(ヘルスモニタリング)システムや、**光ファイバー伝送式の飛行制御システム(フライ・バイ・ライト)**を搭載し、安全性と信頼性を高めている。主翼の縦列折りたたみ構造やローター格納機構により、駐機時の占有面積を大幅に削減でき、限られたスペースでの配備にも対応可能だ。

趙氏は「完全な自主知的財産権を有する傾転制御・飛行制御システムや、大出力の傾転作動・伝動システムなど、一連の基幹技術を自力で確立したことが、今回の最大の成果だ」と語る。軽量複合材料と一体成形技術の広範な採用により、構造強度を確保しつつ機体重量を抑え、運航コストの低減にもつなげた。

「镧影R6000の初飛行成功は、中国がティルトローターという最先端航空分野で、長年続いてきた技術的独占を打ち破り、世界の最前線に並んだことを意味する」。趙氏はこう述べ、都市型空中交通(UAM)をはじめとする低空経済の発展を大きく後押しする存在になるとの見方を示した。

聯合飛機集団によると、2026年1月からは傾転モードを含む本格的な飛行試験を開始し、耐空証明の取得を加速する方針だ。あわせて、量産・実用を見据えた改良型や有人機仕様の研究開発も進め、将来的にはビジネス移動、物流輸送、緊急救援など、幅広い分野での実用化を目指すとしている。

(中国経済新聞)