帰国まであと2日となった12月15日、家族4人で北京から天津へミニ旅行をした。


- “高鉄”と呼ばれる中国版新幹線の車体と車内の様子。
今やほぼ中国全土を網羅している “高鉄”、その中で北京―天津間は最初に開通した区間である。この区間は在来線時代から運行本数が多く、最近は天津駅のほか天津南駅や天津西駅にも“高鉄”が直通している。北京南駅から天津駅までの所要時間は、開通当初は30分だったが今は少し減速しておよそ35分、走行中の時速は300㎞を超えることはなかった。

- 天津駅南口の駅前広場。
大変立派な駅舎である。私は過去に何度も訪れており、以前はここからバスやタクシーに乗り換える人が多かったが、今は構内で直結している地下鉄に乗り換える人が多く、便利になった一方で駅前が寂しくなってしまった。

- 天津駅を通る地下鉄。
天津も今は路線網が充実していて、駅には3本の地下鉄が乗り入れている。そのうちの1本に乗って公園を訪れ、その後繁華街にも足を運んだ。

- 水上公園。広大な面積であり、中には動物園や遊園地もある。


- 大手デパートの地下にある日系の飲食店。
天津最大の繁華街には以前、日系の大手デパートがあったが撤退してしまった。しかし実際にはその建物内に今でも日本の飲食店が存在しており、在留邦人が急に不便になることもなく生活への影響は少ない。報道では日本が敗走するような印象を与えるが、実態としてさしたる変化は感じない。
12月17日、11日間過ごした北京ともお別れし帰国の途に就いた。

- 早朝発の便で北京を後にした。
今回は高市首相の台湾有事発言で日中関係の冷え込みが伝えられた中での渡航となり、所属会社やインバウンドの専門家から、「日系飲食店の売上に影響はないか」「日本の報道に対して中国人はどう思っているか」などの調査課題を与えられていた。しかし街中の様子は別段変わったこともなく、いつも通りの日常生活を過ごしていた。
中国にいると、乗り物の中や飲食店など公共の場で日本について話しているのを随分と耳にする。その多くは日本をリスペクトしたもので、「まだまだ日本に及ばない」「日本を見習わなくてはいけない」といった内容である。今回はバスの中で、「今は日本に行くのにふさわしい時期でない」というやや寂し気な若者の話し声も聞こえた。
中国語には“莫談国事”という言葉があり、直訳すれば「政治の話はしないこと」となるが、決して「物言えば唇寒し」という意味ではなく、政治の話について敬遠ムードが漂う様子を示す。今回、課題について何人かに水を向けたが、みんな余り関心がなさそうだった。

- 警察による電動バイクの取り締まり。12月から電動バイクの利用規制が強化され、大きな交差点でこのような光景をしばしば目にした。
この写真も当局の高圧的な姿勢というイメージを与えるが、実際には警察がにこやかな笑みを浮かべながら違反切符を発行し、それを違反者が納得顔で苦笑いしながら受け取るなど、極めて「和やか」な取り締まり現場だった。
中国では街中で警備員が身分証明書の提示を求めることは日常茶飯事で、今回私も経験したが、以前とは違って最初に“麻煩您”(すみませんが)と言い、最後に“謝謝”と言うなど、極めて丁寧な応対ぶりだった。今回の渡航で一番印象深かったことである。
ネットメディアの普及で一たび問題が起きればすぐに拡散してしまう中、騒ぎを静めるには必死になって火消し報道に努めることではなく、その話題に触れないようにするのが一番だとも見える。報道従事者としては歯がゆいところであるが、報道が冷めれば誰も関心を持たなくなり、時の経過とともに円満に収まってゆくものなのだろう。(このシリーズ終わり・森 雅継)
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【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で千葉県に在住。
