果実を正確に摘み取る収穫ロボット、自律飛行する農業用ドローン、そして田んぼで“ワルツ”を踊るかのようなスマートトラクター——。天津市で開催された第22回中国国際農産品交易会(以下「農交会」)では、最先端の農業テクノロジーが一堂に会し、秋の収穫期を迎える中国農業の“スマート化”を鮮やかに映し出した。
国家会展中心(天津)の展示会場では、遨博(北京)智能科技の収穫ロボットが来場者の注目を集めた。ロボットには両眼立体視による高精度位置決め技術が搭載されており、果実や野菜の成熟度と最適な摘み取り位置を瞬時に判別。高温のビニールハウス内でも24時間連続作業が可能で、作業効率を大幅に高めるという。

一方、深圳市の大疆(DJI)イノベーションが発表した農業用ドローン「T100」も話題を呼んだ。最大飛行半径は2,000メートルに及び、農林業における散布・播種・運搬など多様な作業に対応。自律航行機能も備え、複雑な地形での肥料散布や病害防除といった難作業の効率化を実現している。
また、潍柴雷沃が披露したスマートトラクターは、まるでパフォーマンスのような精密動作を披露。数トンもの車体を持ち上げ、後輪だけでバランス走行しながら旋回する姿に、観客から驚きの声が上がった。「農機はもはや単なる“力仕事の主役”ではなく、知能化によって“エレガントな進化”を遂げている」と、潍柴雷沃の河北地域販売責任者・李軍氏は語る。こうした動作の実現は、高度な油圧制御とスマートナビゲーション技術の連携によるものだという。
農業分野は今、IoT、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AIなどの情報技術の重要な実験場にもなっている。遨博の李燊陽氏によれば、「当社の収穫ロボットはAIとマルチセンサーを融合し、ディープラーニングに基づく画像認識アルゴリズムを活用している」と説明する。DJIの天津代理店を務める劉喆氏も「当社のドローンは高精度衛星測位に加え、LiDARやAI、AR技術を組み合わせており、複雑な地形でも安定した飛行と着陸・障害物回避を可能にしている」と話した。
注目すべきは、これらの“スター技術”がすでに実証段階に入っている点だ。李氏によると、収穫ロボットは現在、北京や上海などの農場で試験導入が進められており、性能を改善したうえで本格普及を目指すという。
農業農村部市場与信息化司の宋丹陽副司長は、「スマート農業は現代農業の発展における重要な方向性であり、今後の重点分野でもある」と強調。中国ではすでに農業技術進歩の貢献率が63.2%に達し、良質品種の普及率は96%を超え、農作物の耕種収一貫機械化率も75%を上回るなど、農業の近代化が着実に進展している。
今後は、政策支援の強化や技術供給力の向上、データの活用促進などを通じて、スマート農業の核心技術と装備の開発を加速させる方針だ。さらに、関連基準の整備や品質検査・認証制度の構築を進め、農業強国の実現に向けた力強い後押しを図るとしている。
(中国経済新聞)
