弁当の配達員、1泊315円の旅館で3年以上生活

2024/04/14 15:30

4月9日午前11時、弁当の配達をしている鄧程貴(Deng Chenggui)さんは起きて洗面を済ませ、5分後に制服を着ながら階段を降り、スクーターにまたがって1日の仕事を始める。今年31歳で、湖南省益陽市から同じ省内の長沙市に来て3年あまりの間、ずっと1泊15元(約315円)の舒雅旅館で過ごしている。部屋はベッドのほかに余地はなく、その隅の方にティッシュやボディーソープなど日用品が置いてある。

鄧さんは2020年11月に、「長沙ではデリバリーは給料が高い」と友人に言われ、ここにやってきて、まず住処を探し始めた。「ネットで検索したら1泊15元(約315円)の宿を見つけた」と言う。賃貸に住むか安い部屋に住むか、そろばんをはじいた末にこの宿に住むことを決めた。

「借家なら光熱費も払わきゃいけないし、布団なんかも自分で洗わなくちゃいけない」と鄧さんは言う。ここではその必要もなく、その分仕事に集中できるのでお金も稼げる、と言うのである。

「ほとんど1日中外にいて、仕事が終わった夜にここで過ごすわけだから、住み心地はどうでもよくて、とりあえず寝られればいいかな、って感じですね」と。最初の日は眠れないのではと心配していたが、横になったのは深夜1時で、1日の疲れがどっと押し寄せてきてたちまち眠り込んでしまった。

この旅館を経営して17年になる姚冬梅さんは、15元(約315円)は開業当時の価格であり、今でも据え置きの部屋もあるという。「鄧さんは口数が少なく内向的で、まじめだ」と話す。若者である鄧さんがこんなに長く滞在するとは当初は思っていなかったという。

鄧さんは、デリバリーの仕事を始めたころは生活も不規則で、朝7時過ぎに起きて仕事、3度の食事もままならず、お腹がすいたら適当な場所で腹を足し、夜中1時過ぎに帰宅して寝ていた。当初は1日の収入が60元(約1260円)程度で、宿代を払う都度「泣き言」を言っていた。姚さんはこれに対し、「若いうちは焦っちゃダメ。先を急がないで。商売とはそんなものよ」と言った。

それから鄧さんは仕事も軌道に乗り、多い日には60件も配達をして400元以上(約8000~9000円)を稼いだ。「今は生活も規則正しくなって、午前11時には起きて仕事に行って、夜10時半までに帰る。3度の食事の時間も大体同じ」とのことである。複数のアプリから配達を受け付ける時もあり、前の配達が終わらないうちに次の仕事が入ったりする。1日の収入は今、平均で200元(約4000円)あまりとなっている。

鄧さんは将来の計画もあって、今はお金をためている。「来年は仕事をやめて実家に帰るつもり。ためたお金で商売でもしてみたい」と話している。

(中国経済新聞)