3月3日(日曜日)の午後、東京都内で、都の日中友好協会が主催する「中国語春期ワンデーレッスン」に参加した。会場は渋谷駅近くの「リフレッシュ氷川」地下1階の多目的室だった。
この講義は毎年、春季と夏季の2回開催しており、私は今回で通算5回目の参加である。2004年~2005年に3回連続で出席した経験があり、当時は中国での会社員生活を目指して懸命に中国語のブラッシュアップに努めていた頃だった。つまり、この講義は私を育んでくれた場なのである。10数人の参加者は高齢者から若手まで様々で、相変わらず女性の方が多かった。
その後、念願かなって北京生活を始めた。そして10年以上過ごしたころに一時帰国を利用してまた参加した経験がある。そして今回、本帰国を果たし、最近東京近辺に転居したのをきっかけに、およそ8年ぶりに顔を出した。
▲今回の主催者である東京都日中友好協会の小櫃理事(右)。中国赴任歴もあり、今日は自ら受講生となって一緒に勉強した。
講義で使った教材は、中国各地の方言に関する説明が書かれている。講義は「朗読+和訳」との形で進行し、受講者のレベルはまちまちだったが、それぞれ懸命に取り組んでいる姿が印象的だった。和訳について、一般的に学習参考書の巻末などに書かれているのはほぼ直訳で「参考訳例」であり、本格的な翻訳になると原文とは表現方法が随分と違ってくる。
会話のレッスンではたいてい、まず最初に自己紹介をする。よく言う「趣味は〇〇です」、日本人はほとんど“我的爱好是〇〇”と言うが、ネイティブはそうは言わず、普通は“我喜欢(動詞)〇〇”と言う。逆に言えば、“我喜欢听音楽”は「趣味は音楽鑑賞です」と訳せる。
講師を務めた高立新先生、北京出身で日本滞在歴は30年以上という。高先生は女性の先生だが、中国語では“先生”は男性に対する敬称であり、日本語の「先生」は “老師”という。「高齢の先生」という意味ではなく、若くても“老師”である。その“高老師”が、受講者全員に絵ハガキとお菓子をプレゼントしてくれた。
▲講義は2時間あまりで午後4時過ぎに終了し、最後に集合写真を撮った。中央左の女性が“高老師”である。
私が初めて中国語を学んだのは40年前である。それでも、今回の授業で改めて学ぶこともあった。そして今の本業は中日翻訳であり、辞書やテキストのような忠実な訳よりも「読みやすさ」を重視するようになった。中国語表現は上記の通りに動詞を頻繁に使うが、「動詞」+「目的語」を教科書のように「○○(名詞)を××する(動詞)」と訳さず、名詞に変えると、日本人らしい表現になる。
思いつくままに例を挙げると、“撒豆子”は「豆をまく」ではなく「豆まき」、“矿工”は「仕事をさぼる」ではなく「欠勤」、“没油”は「油がない」ではなく「ガス欠」、“换队”は「チームを変える」ではなく「移籍」、“换房”は「住宅を交換する」ではなく「住み替え」などと訳す。ちなみに“误了车”は「(列車を)乗り間違えた」ではなく「乗り遅れ」という意味である。
(文・写真:森雅継)
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【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で千葉県に在住。