6月15日、厦門(アモイ)大学とアジア通信社の共催による「第1回中日水素エネルギー産業協力フォーラム」が厦門(アモイ)大学で開催され、日本と中国から100名以上の水素エネルギー専門家や企業関係者が出席した。
豊田通商の東アジア極CEO兼豊田通商(中国)総経理の綿貫辰哉氏は講演で、「日本の水素エネルギー産業はトヨタの水素自動車から始まり、2016年の初代水素自動車「MIRAI」の発売からわずか6年余りで水素列車、水素船舶、水素ハウス、水素発電へと拡大してきました。水素エネルギーは、もはや「水素自動車」という概念にとどまらず、社会のあらゆる場面に共通するエネルギー源となっており、豊田通商は、水素電池だけでなく、水素電気推進システム、水素タンク、コア材の開発、42トンクラス大型水素電池トラックや水素マイクロバスの開発にも取り組んでいます」と述べた。
パナソニック(中国)有限公司総裁の趙炳弟氏は、フォーラムでパナソニックの定置型純水素燃料電池の開発と普及について紹介した。 その中で「定置型純水素燃料電池は、家庭、オフィスビル、商業施設などの統合エネルギーシステムとして、照明、家電・空調機器、洗濯・調理、リフト運転など必要な電力を確保でき、23万台以上の販売実績を上げています。その中でも、東京(オリンピック村)の大規模インテリジェント住宅地「晴海フラッグ」はパナソニックの定置型純水素燃料電池を採用したことで、各家庭に水素エネルギーを導入することが可能となり、世界初の水素住宅地となりました。また今年2月には、無錫市で世界初の水素燃料電池の実証プロジェクトを開始し、中国での純水素燃料電池の普及が正式に決定しています」と述べた。
中国工程院の院士であり、中国石油化工集団(シノペック・グループ)のチーフエンジニアである謝在庫氏は、中国における水素エネルギー産業分野での今後の動向について説明した。「特にグリーン水素製造技術や高性能水素貯蔵技術において、中国は日本に追いつきつつあります。しかし、水素エネルギーの製造コストと販売価格は、依然として水素エネルギー産業の発展にとって大きな障害となっており、水素エネルギーの技術や設備が優れているだけでは不十分なため、水素エネルギーが広い発展余地を持つためには、水素エネルギーの価格がガソリンなどのエネルギー源より安くなるようにする必要があります。 そこで、シノペック•グループは「中国No.1の水素エネルギー企業」の建設と、水素エネルギー産業チェーンの構築を目標に掲げ、2025年までにグリーン水素の生産能力15万トン/年、水素充填ステーションの数で世界第1位を堅持する予定です」と述べた。
中日水素エネルギー産業協力フォーラム会長の李天然氏は「日本には技術があり、中国には市場があります。水素エネルギー産業における中日の協力はまだ始まったばかりですが、水素エネルギー産業発展の最終目標は自動車ではなく、水素エネルギー社会の構築であり、その見通しは非常に幅広くなっています。そのため水素エネルギー産業における両国の協力を深めることは、間違いなく新しい産業統合分野を生み出し、中日経済協力を更に推し進めることに繋がるでしょう」と述べた。
厦門大学党委員会常務委員で副学長の江雲宝氏は「中国のカーボンニュートラルという目標は世界への政治的コミットメントであり、水素エネルギー産業の発展はカーボンニュートラル社会を実現するための重要な戦略イニシアチブです。厦門大学はエネルギー研究所や嘉庚(かこう)創新実験室などプラットフォームの力を借りて、人材を積極的に動員し研究分野を広げ水素エネルギー産業の研究基盤を強固なものにすることで、エネルギーの未来を共同でリードしていきましょう」と述べた。
中国科学技術部交流センター代表の富貴氏は「中国と日本は長年、科学技術や産業に関する分野で協力してきましたが、水素エネルギー産業はこうした中日の関係において新たな協力関係を生み出しました。水素エネルギーは、カーボンニュートラルな社会の構築において重要な役割を果たすことは間違いなく、今後成果が得られることを期待しています」と述べた。
今回のフォーラムには他にも日本から、京都大学名誉教授の平尾一之氏、日本創研最高技術責任者の元木寅雄氏、カンケンテクノ株式会社代表執行役社長の齋藤文彦氏等、中国から中国工程院院士で厦門大学エネルギー学院名誉院長の陳勇氏、カナダ工学アカデミー院士の葉思宇氏、中国科学院寧波材料研究所研究員の王宇楠氏、厦門大学エネルギー学院副院長の李剣峰氏、嘉庚創新実験室常務副主任兼教授の鄭南峰氏が参加し、水素エネルギー社会構築に向けた技術分野での日中協力や今後の道筋などが発表された。
また、株式会社アジア通信社の徐静波氏は第1回中日水素エネルギー産業協力フォーラムの共同議長として「日本の水素エネルギー産業の発展概要と中日協力の展望」と題した講演を行なった。
(中国経済新聞)