中国の李強新総理に対する印象

2023/03/17 17:23

中国の総理はまた「李総理」となる。これは3月13日に閉幕した全人代で、「李克強氏」から「李強氏」に交代したためである。

李強氏は今年64歳、浙江省温州市の農村に生まれ、水力発電所の管理者から温州市委書記となり、習近平氏が浙江省委書記であった5年余りの間ずっと省の秘書長を務め、事実上習氏の「官房長官」となっていた。習氏が中国共産党中央の総書記および国家主席に就任した後、浙江省省長、江蘇省委書記、上海市委書記を歴任し、2022年10月の第20回党大会で中央政治局の常務委員に選ばれ、そして今回の全人代で李克強氏に代わり総理に就任したのである。

李強氏と習近平氏

李強氏はあまり強い印象を持たれていないが、その中で印象深いのは習氏の側近であること、そして上海市委書記であった際に3か月近いロックダウンを実施したことの2点である。

なので、今回の総理就任についてさほど期待はされていなかった。国務院での勤務経験もなく、国全体をつかさどった経験もなく、これまで一介の「地方官」であったと見なされ、仕事ぶりについてはなおさら未知の状態であった。

3月13日の全人代閉幕後の総理記者会見は、李強氏のデビューの場であった。

極めて意外なことに、李強氏の印象は予想を超えたものだった。期待の薄かった中での記者会見で、回答は一貫してシンプルで明確、力強く、庶民性や自信、知性も示された。

会見場で見る限り、李強総理には次のような特長があった。

まず、質問の骨組みへの考えや論理的思考力が優れていた。共産党中央の政策的精神を頭に叩き込んでいたうえ、話し方も流暢かつ正確で、理解力や思考力に長け、このポストにふさわしい人物であると感じさせた。備えるべき素養は、中央政府の精神を完璧に覚えて基本的な思考の骨組みを立てているか、自分の言葉で正確に表現できるか、という2点であり、基本的な思考力において、落ち着きのある高級官僚として疑念の余地はないと思わせるものだった。

次に、地方での勤務経験である。様々な地方でトップを務めたことで前述のスキルが十分に磨かれた。中国の省は事実上、国の縮小版であり、全体を把握し理解することが必須である。よって総理の地位に就くや否や十分な自信を示し、おじけづくこともなかった。また、地方勤務が長かったゆえに、質問には実にきっぱりと答えた。かつての綱紀粛正指示「大興調査研究之風」への回答や、民間企業の創業精神「四千精神」で生まれたレジェンドを発揚し続けるべき、との答えは、自信たっぷりであった。

そして、演説は原稿なしであった。終始原稿もデータも見ず、質問の回答も大変流暢だった。こうしたスキルは極めて重要であり、李強総理のスキルは長らくのトップの地位で築いたもので、慌てごしらえの演説ではなかった。そう、このようなスキルを身に着けるにはトップに座り、繰り返し空で演説をすることが必要である。また、相手の質問を聞いてから極めて簡潔にまとめて覚え、その質問を要約し、簡単明瞭に答えていたところにも、論理的思考力の良さがうかがえた。一つ一つ筋道があり、決して乱れなかった。日常業務での対話でこうしたスキルや答え方を身につけたのであって、決してその場しのぎでできるものではない。

この記者会見から、李強氏の論理性や弁舌は李克強氏を上回ると見た。総合的なスキルや業績を見極めるにはまだ時間が必要であるが。

(中国経済新聞編集長 徐 静波 北京報道)