中国の新エネ車業界で今年、車両や電池の製造よりもリチウムで利益を目指す動きが出ている。BYDは事業範囲を川上側に伸ばし、リチウムの主産地である江西省宜春でCATLや国軒高科など車載電池メーカーと奪い合いを演じている。
業界では現在、川上側で利益を求める動きが出ており、BYDなどがサプライチェーンの強化も兼ねて事業を拡大している。南米チリでのリチウム生産の不安を受けて他の供給先を求めているBYDは、「アジアのリチウムの都」と言われる宜春での確保を目指している。
公開資料によると、宜春には世界最大のリチウム雲母鉱があり、埋蔵量は炭酸リチウム換算で636万トンである(炭酸リチウムは目下1トン約50万元=約100万円)。また酸化リチウムの埋蔵量は中国のリチウム埋蔵量全体のおよそ23.6%となる258万トンで、このうち採掘可能分が同じく31%の110万トンである。
BYDは現在宜春で、CATLや国軒高科など車載電池メーカーとのリチウムの奪い合いを演じている。国軒高科は去年3月、宜春市鉱業有限責任公司と合弁で採掘会社を設立しており、これまでの投資額は合計230億元(4624億円)を超えている。この事業による炭酸リチウムの生産量は、今年は8000トンに達し、2023年には2.5万トン前後となる見込みと伝えられている。国軒高科は現在、江西省内の2か所でリチウム鉱の試掘権を獲得している。
CATLも去年9月に宜春に乗り込み、135億元(2714億円)をかけて年産50ギガワットのリチウム電池製造工場を建設することで地元政府と合意に達している。さらに今年4月には、子会社の宜春時代がリチウム鉱の試掘権を獲得している。
BYDも先月、285億元(5730億円)をかけて宜春に年産30ギガワットの車載電池工場と年産10万トンの電池製造用炭酸リチウムおよびカオリナイト(リチウム含有)の選鉱および総合開発利用拠点を建設すると発表し、その後1か月余りで採掘業務などの実施に向けて会社を設立している。
(中国経済新聞)