「1日利回り1%」を謳った詐欺的投資プラットフォーム「鑫慷嘉」が崩壊――被害総額は約2兆7300億円

2025/07/11 12:30

2025年6月末、中国国内で新たな大型金融詐欺事件が発覚した。香港『星島日報』によると、「鑫慷嘉(しんこうか)」と名乗る違法投資プラットフォームが突如として出金停止(通称「爆雷」)に陥り、全国で200万人を超える会員が巻き込まれ、被害総額は130億元(約2兆7300億円)にのぼるという。

この事件の注目点は、従来型のポンジ・スキームに加え、最新の金融技術を悪用している点にある。

「鑫慷嘉」は、USDT(米ドルに価値が連動する暗号資産、世界で最も流通しているステーブルコイン)を投資の基軸とし、投資家に人民元をまずUSDTに換金させ、その後「入金」「配当」「出金」の全てをUSDTで処理していた。

USDTは国際的に自由に移動可能であり、これによって当局による資金追跡は極めて困難になっている。

「鑫慷嘉」の運営主体は、2024年4月に設立された「貴州鑫慷嘉大数据服務有限公司」とされるが、その信頼性は極めて低く、同年8月・10月・2025年6月には「登記された住所で連絡が取れない」として行政当局から「経営異常名録」に記載された。

同社が「DGCX(ドバイ商品取引所)」の名を騙り、あたかも海外正規取引所と提携しているかのように装っていた点である。DGCXはすでに2025年4月の段階で「中国国内に一切の提携関係は存在しない」と明確に警告を発していた。

また、「鑫慷嘉」は全国を四つの「戦区」に分け、各地に“司令官”“旅団長”など軍隊式のランクを設け、会員の人数と投資金額に応じて収益分配する制度を整備。これは典型的なネットワークビジネスの仕組みであり、下線(紹介者)を増やすことで上位者が報酬を得る構造だった。

最も特徴的なのは、「1日1%」という非常識な利回りを謳っていた点である。

仮にこの利回りが1年間継続すれば、元本は36倍以上に膨れ上がる理屈である。これに惹かれた多くの投資家が資金を投入し、結果として130億元以上の資金が詐取された。

6月25日、「鑫慷嘉」は突如として出金を停止した。その直前には「出金には高額の手数料が必要」とする新たなルールを設け、資金を引き出そうとする会員からさらに現金を巻き上げていた。

それだけではない。暴露されたチャットログによれば、運営関係者は「投資家の財産と知能が釣り合っていない」と嘲笑する発言までしており、被害者たちの怒りは頂点に達している。

USDTを中心とする決済体系を利用したことで、資金は海外の取引所やウォレットを経由し、どこに流れたかの追跡は極めて困難とされる。さらに、サイトのサーバーは米国IP上に設置されており、運営陣は既に海外へ逃亡した可能性が高いと見られている。

ここ数年、中国では「高利回り+暗号資産」の組み合わせによる詐欺が横行しており、今回の「鑫慷嘉」事件はその最も典型的な事例の一つといえる。

規制当局は注意喚起を強めているが、USDTやビットコインなどを利用した「越境型詐欺」の手口は年々進化しており、摘発には国際的な連携と専門的な知見が不可欠となっている。

今回の事件は、単なる詐欺ではなく、情報格差と金融リテラシーの弱さを狙った“知能犯罪”とも言える。

(中国経済新聞)