9年前の2013年5月、無名だった北京の会社「総部基地全球控股集団」が、ロンドン市の特別開発事業を受注した。当時ロンドン市の市長を務めていた現首相のボリス・ジョンソン氏が、同社取締役会会長の許為平氏と開発契約を結び、中国では驚きの声が上がった。
この「ABPアジアビジネスセンター」と呼ばれた一大プロジェクトはしかし、ジョンソン氏が首相の座を退くと発表した現在に至るまで未完成である。
工期の大幅な遅れに対し、ロンドン市は2021年8月、「2022年3月までに契約通り工事を行わなければ、未着手部分の土地の開発権をはく奪する」との最終告知を総部基地に発した。しかし、7月になっても結果が出ていない状態である。
このプロジェクトは、中国の不動産会社が初めて手掛けるイギリスでの開発事業で、中信集団の子会社である中信建設が請負先となっていた。
建設地はロンドン東部のテムズ川沿いにあるロイヤル・アルバート・ドックで、総工費17億ポンド、面積43.66万平方メートルに及ぶものである。
ロンドン市はこの地を3か所目の金融街とし、3万人分の雇用を生んで60億ポンドの経済効果を上げると見込んでいた。中国の単独デベロッパーでのイギリス最大の開発事業となり、また中国の建設会社にとってイギリスでの最大の納入案件となるはずであった。
計画では、2016年の第一四半期に着工、2017年に6万平方メートルのオフィスビルが完成し、2018年には合計6期分の工期のうち一期目となる14万平方メートル分が完工、6年ないし8年ですべて完工するはずであった。
ところが、一期目が完成したのは2019年4月で、それから3年間はかばかしい進展もなく、その一期目の建物もほとんどが空家状態となっている。
総部基地の許会長は2019年9月、イギリスのメディアの取材に対し、およそ4億ポンドの前金を払っていた会社がEUの離脱により態度を変えてしまい、プロジェクトは暗礁に乗り上げたと述べている。
許氏は1960年生まれで、国務院農村政策研究室の配下の機関に勤務し、1996年初めにイギリスへ留学、1997年にイギリスのDAUPHINインターナショナルアジア太平洋総裁として帰国したのち、2002年ごろに北京に総部基地を発足させ、産業パークの開発を手掛けている。
イギリスのプライスウオーターハウスは、このプロジェクトはすでに清算を始めていると発表した。
(中国経済新聞)