中国保険業界、今年1~8月の罰金・没収額は約43億円

2026/09/14 18:25

今年に入り、中国の保険業界では監督当局による処分が一段と強化されている。企業情報サービス「企業預警通」によると、今年1~8月に保険会社とその支店などの保険機関が、金融監督管理総局とその派出機関、中国人民銀行(中央銀行)、中国証券監督管理委員会(証監会)から受けた行政処分は計899件に上った。前年同期比で10.44%増加した。

罰金・没収額の合計は約1億9,500万元(約42億9,000万円)に達した。なかでも、保険販売をめぐる違反が最も多く、54人の保険業界関係者が業務禁止処分を受けた。※日本円は1元=22円で換算。

処分を受けた保険機関を種類別に見ると、899件のうち損害保険会社が486件、生命保険会社が408件で、それぞれ全体の54.06%、45.38%を占めた。処分件数が最も多かったのは中国人寿保険で64件。次いで中国人民財産保険が55件、中国平安財産保険が51件となった。

高額処分も相次いでいる。今年1~8月の保険機関に対する罰金・没収額は計約1億9,500万元(約42億9,000万円)。このうち、1件当たり100万元(約2,200万円)以上の処分は16件で、合計3,020万6,700元(約6億6,455万円)に達した。全体の15.52%を占める。さらに、1件当たり300万元(約6,600万円)を超える処分も3件あり、華安財産保険、太平財産保険、新華人寿保険が対象となった。

華安財産保険は、承認または届け出済みの保険約款や料率を規定通り使用していなかったほか、報告データに不正確な部分があったこと、営業区域をまたいで事業を展開していたことなどを理由に、警告と386万元(約8,492万円)の罰金を科された。

このほか、同社の山東支店には60万元(約1,320万円)、福建支店には35万元(約770万円)の罰金が科された。関係責任者の袁秀奇氏ら13人にも、合計84万元(約1,848万円)の罰金が科された。

太平財産保険は、未決済保険金に対する準備金を規定通り積み立てていなかったほか、承認または届け出済みの保険約款・料率を適切に使用していなかったこと、報告データが不正確だったこと、営業区域をまたいで事業を展開していたことなどを理由に、373万元(約8,206万円)の罰金を科された。関係責任者7人にも計62万元(約1,364万円)の罰金が科された。

新華人寿保険は、委託先の投資行為に対する監督が不十分だったことや、費用配分が不正確だったことなどを理由に327万元(約7,194万円)の罰金を科された。関係責任者6人にも計49万元(約1,078万円)の罰金が科された。こうした処分では、保険会社だけでなく、違反に関与した責任者も同時に処分する「ダブル処分」が目立つ。

今年1~8月には、保険機関の関係責任者1,454人が会社とともに処分された。このうち54人には保険業務への従事禁止処分が科され、11人は終身の業務禁止となった。その業務禁止期間も1年から最長21年に及んでおり、監督当局による責任追及が厳しさを増していることがうかがえる。

処分理由を分野別に見ると、販売行為、情報開示、コーポレートガバナンス・内部統制に関する違反が特に多かった。処分件数はそれぞれ450件、391件、183件に上った。

このほか、保険の引受・保険金支払いに関する違反が57件、保険募集人など従業員に関する違反が37件、資格・許認可管理に関する違反が22件、保険資金の運用に関する違反が9件、マネーロンダリング対策に関する違反が6件、関連当事者取引に関する違反が4件だった。

なかでも、保険販売をめぐる違反は最も多い450件に上った。内訳を見ると、保険契約で定められていない利益を提供・約束したケースが162件、架空の代理店業務を通じて手数料などを不正に取得したケースが131件、承認・届け出済みの保険約款や料率を規定通り使用しなかったケースが99件、保険業務を利用して不当な利益を得たケースが43件、契約者や被保険者、保険金受取人を欺いたケースが40件、虚偽または規定に反する宣伝を行ったケースが26件となっている。

一部の保険会社では、販売をめぐる違反が繰り返し発生している。例えば今年1月、瑞衆人寿保険の西安電話販売センターは、契約者を欺いたとして10万元(約220万円)の罰金を科された。阜陽センター支社も、財務データの不正や架空の代理店取引などを理由に32万元(約704万円)の罰金を科された。

5月には韓城支社が、保険契約で定められていない利益を提供したとして22万元(約484万円)の罰金を受けた。7月には曲靖センター支社が、契約者に契約外の利益を提供したことや、保険業務を利用して第三者の不当な利益獲得を助けたことなどを理由に15万元(約330万円)の罰金を科された。

南開大学の金融学教授、田利輝氏は、保険会社では初年度の保険料に対する販売手数料が3~4割に達する一方、2年目以降は大幅に低下するため、営業現場が「契約の質より新規契約の獲得を重視する」方向に傾きやすいと指摘する。

また、保険商品は契約内容が複雑で専門性も高いため、契約者が商品の本当の価値を判断するのは容易ではない。こうした情報格差が、顧客を誤認させるような販売につながる温床になっている。

さらに懸念されるのが、違反行為が一連の「仕組み」として組織化されていることだ。田氏は、「顧客情報の入手→プレゼントなどによる集客→一斉説明会→架空の制度や政策を持ち出した説明→契約を迫る」という流れが形成されていると指摘する。

保険販売をめぐる問題は、より巧妙かつ多様化している。今年3月、復旦大学の保険研究チームが発表した「2026年保険業界消費者権益保護業務報告」によると、現在ではショート動画や動画配信、ライブ配信などの新たなメディアが、保険販売における違法・不適切なマーケティングの温床となっている。

多くの保険会社や保険代理店、販売担当者が、ショート動画やライブ配信を通じて、虚偽の収益情報による誤認誘導、不適切なリスク説明、販売主体に関する虚偽情報、無許可の保険販売など、重大な違法・規則違反行為を行っているという。

田氏は、「コンプライアンス文化を個人の道徳的自覚だけに頼るべきではない。重要なのは、販売の仕組みそのものを制度面から再構築することだ」と指摘する。

今年に入り、中国では「金融機関商品適合性管理弁法」や「保険商品適合性管理自律規範」が相次いで施行・導入されている。しかし、制度を整備することは第一歩にすぎない。重要なのは、制度を実効性のある形で運用することだ。

例えば、業務システムに適合性チェック機能を組み込み、顧客に適合しない商品については自動的に契約手続きを停止する仕組みが必要になる。営業担当者が人為的にルールを回避できる余地をなくすことが求められる。

また、販売手数料についても、契約時に一括して前払いする方式から、一定期間にわたって分割・繰り延べで支払う方式へ転換するとともに、問題のある契約については手数料を返還させる「クローバック」の仕組みを構築する必要がある。

(中国経済新聞)