バイトダンス、国産AIチップ5万基を大量調達へ 中国「算力戦争」が加速

2026/06/19 11:30

中国のIT大手・字節跳動(ByteDance、バイトダンス)が、国産AIチップの調達をさらに拡大する動きを見せている。業界関係者によると、同社は中国GPUメーカーの天数智芯(Iluvatar CoreX)と、少なくとも5万個のAIチップ購入について協議を進めており、主に大規模言語モデル(LLM)の推論処理に活用する計画だという。

報道によれば、今回検討されているのは天数智芯のクラウド向け推論GPU「智鎧(Zhikai)」シリーズで、学習用途には同社の「天垓(Tiangai)」シリーズが利用される見通しだ。契約が成立すれば、天数智芯は華為技術(Huawei)の「昇騰(Ascend)」、寒武紀(Cambricon)に続く、バイトダンスにとって3社目の主要GPUサプライヤーとなる。

近年、バイトダンスはAIインフラへの投資を急速に拡大している。同社は大規模モデルの学習用と推論用でサプライチェーンを明確に分離しており、学習には華為や寒武紀の高性能AIチップを採用する一方、一般消費者向けAIサービス「豆包(Doubao)」や企業向けMaaS(Model as a Service)では、推論専用GPUを積極的に導入している。

今回の動きは、単なる算力不足への対応ではなく、中国インターネット企業による「算力自主化戦略」の一環とみられている。

バイトダンスだけでなく、中国の主要IT企業は相次いで大規模データセンター建設を進めている。

百度(Baidu、バイドゥ))は全国規模で万枚級GPUクラスターを構築。阿里巴巴(Alibaba,アリババ)は2026年度第1四半期だけで380億元(約7,980億円)を超える設備投資を実施し、今後3年間で累計3,800億元(約7兆9,800億円)規模をAIインフラへ投じる方針を示している。騰訊(Tencent テンセント)も全国各地で高性能AIクラスターを整備し、2026年後半から国産算力の本格導入を予定している。

業界関係者によれば、現在のAI市場では学習需要を上回る勢いで推論需要が拡大している。

面壁智能(ModelBest)の李宇軒氏は、「大手企業にとって推論需要は学習需要を大きく上回る。推論は学習ほど高性能なチップを必要としないため、国産GPUでも十分に対応可能な領域が増えている」と指摘する。

香港理工大学の研究では、超大規模クラウド環境においてAI推論が総消費電力の60~90%を占めると推計されている。また、中国工程院によると、2026年第1四半期の中国国内における推論需要は学習需要の約8倍に達した。

市場調査会社・灼識諮詢(CIC)の予測では、2030年の世界AI推論チップ市場規模は3兆696億元(約64兆4,000億円)に達し、中国市場だけでも1兆1,664億元(約24兆5,000億円)へ拡大する見込みだ。

一方で、AI需要の急拡大により、GPU不足は深刻化している。

曦望(Sunrise)の王湛共同CEOは、「現在は『GPU争奪戦』の状態だ。企業はGPUの確保、メモリ調達、データセンター建設を急いでおり、2026年第1四半期には算力レンタル費用が30〜40%上昇した」と説明する。

米国の輸出規制が続くなか、中国企業は依然として一部でNVIDIA製GPUへの依存を残しているものの、国産算力エコシステムの構築は急速に進んでいる。

業界では、短期的には外部調達で需要を補い、中期的には複数の国産ベンダーを活用してリスク分散とコスト削減を図り、長期的には独自AIチップ開発によって競争力を高めるという流れが強まっている。

AI時代において、データセンターと算力は企業競争力そのものになりつつある。

かつてインターネット企業がユーザー数やプラットフォームを競ったように、現在は「どれだけ安価に大量のAI推論を実行できるか」が勝敗を左右する時代に入った。字節跳動をはじめとする中国IT大手は、多様なサプライヤーを組み合わせた独自の算力ネットワーク構築を急いでおり、AI時代の新たな「護城河(参入障壁)」を築こうとしている。

推論需要の爆発的な拡大を背景に、中国のAIインフラ投資競争は今後さらに激しさを増しそうだ。

(中国経済新聞)