中国映画市場が低迷を続ける中、異例の高評価を獲得した作品が観客を呼び込んでいる。青年監督による小規模予算の作品『給阿嬷的情書』(おばあちゃんへのラブレター)が、5月11日時点で累計興行収入1.39億元(約32億円)を突破した。
国家電影局のデータによると、第18週(5月4日~10日)の全国映画興行収入は前週比13.5%減の5.1億元と低調に推移した。「五一連休」明けの平日には4000万元を割り込む日もあったが、母親節を迎えた5月10日には9000万元超に回復した。

五一連休期間の興行成績では、『消失的人』と『寒戦1994』が1億元超えでトップを争う中、『給阿嬷的情書』は9520万元を記録して3位に食い込み、「黒馬」として注目を集めた。特に連休明け以降、公開館数が拡大し、5月9日には大ヒット作『消失的人』とほぼ互角の興行収入をあげ、翌10日には単日首位に躍り出た。
『給阿嬷的情書』の最大の特徴は、映画サイト豆瓣( Douban )評価9.1点という極めて高い評価だ。今年公開された中国本土映画で9.0点を超えたのは本作が初めてとなる。2020年以降の商業映画の多くが7点前後にとどまる中、9点台は極めて稀有で、2024年に公開されたドキュメンタリー『里斯本丸沉没』(9.3点)に次ぐ高得点である。
監督は広東省汕頭市出身の藍鴻春(ラン・ホンチュン)。これが3作目の劇場公開作となる。前作『带你去見我媽』(2022年)は潮汕方言を使った作品で、興行収入2374万元、豆瓣評価7.4点を記録した。今回も非職業俳優を起用し、9ヶ月をかけてキャスティング。ヒロインを務める李思潼は撮影当時大学2年生で、監督が短動画で偶然見つけた新人女優だ。
物語は潮汕地域に根付く「華僑が故郷に送る為替と手紙」を軸に展開する。借金に追われる孫の暁偉が、祖父を探すために海外へ向かう過程で、祖母(阿嬷)と祖父の秘められた過去が明らかになるという感動作だ。地域色が濃厚ながら、普遍的な家族の絆や人生の機微を描き、幅広い層から支持を集めている。
『給阿嬷的情書』はスター不在、小規模予算、主力映画資本のバックアップもない異色の作品だった。それにもかかわらず、母親節効果もあって観客動員を伸ばし続けている。データでは、公開当初は広東省が興行収入の95%以上を占めていたが、現在は60%程度まで全国に広がっている。
中国映画市場では近年、大作中心の興行が続き、中規模・小規模作品が苦戦する傾向が続いていた。今回のように「高評価×口コミ」でヒットするケースは珍しく、業界関係者からも「久しぶりの良質作品の勝利」と評価する声が上がっている。
現在も公開が続き、さらなる伸びが期待される『給阿嬷的情書』。低迷する中国映画市場に一筋の光明をもたらしたと言える。藍鴻春監督は今後も潮汕文化を題材にした作品を続けるとみられ、中国映画の多様性と地域文化の可能性を改めて示した形となった。
(中国経済新聞)
