清明節の連休を前に、中国では高齢者向けの新たなサービスが広がりつつある。中でも注目されているのが、数日から数週間にわたり一時的に高齢者を預かる「短期托養(ショートステイ)」サービスだ。従来の長期入所型施設とは異なり、家族の出張や介護人材の不在などによる一時的なケア不足を補う仕組みとして利用が増えている。
北京市豊台区にある介護施設では、こうした一時預かり型の介護サービスが導入されてから4年が経過し、地域の高齢者に広く受け入れられている。中度以上の要介護者については、条件を満たせば補助金の対象となる場合もあるという。施設側は「家族の事情で一時的に介護が難しくなるケースは多く、短期托養はその空白を埋める役割を果たしている」と説明する。

実際に利用している91歳の高齢女性は、転倒によるけがをきっかけに入所を決めた。「介護スタッフが専門的で、家族も安心できる。食事の準備も不要で負担が大きく減った」と話す。少子高齢化や核家族化の進行により、家庭による介護機能が弱まる中、専門機関による補完は今や不可欠な存在となっている。
専門家は、一時預かり型の介護サービスが在宅介護と施設介護の間をつなぐ新たな形態として重要性を増していると指摘する。復旦大学老齢研究院の研究者は、「介護サービスの提供は長期入所一辺倒から、柔軟で多層的な形へと転換しつつある。短期利用を通じて、高齢者や家族が施設介護への理解を深める効果もある」と分析する。
一方、高齢者向け商品の販売現場でも新たな動きが見られる。北京市朝陽区では、体験型の「シルバーショップ」が登場し、杖や電動車いす、スマート家電など多様な高齢者向け商品を取りそろえている。商品数は開店当初の300種類から500種類以上に拡大し、試験営業期間中の売上は50万元(約1000万円)を超えた。

特徴的なのは「体験重視」の販売スタイルだ。来店者は電動車いすの試乗やリハビリ機器の体験、さらには囲碁ロボットとの対局などを通じて、実際に製品を試すことができる。関係者は「高齢者は実際に体験することで信頼を得てから購入する傾向が強い。体験の場づくりが消費喚起の鍵になる」と指摘する。
中国の高齢者関連市場は急速に拡大している。工業和信息化部によると、市場規模は2014年の2.6兆元(約52兆円)から2024年には5.4兆元(約108兆円)へと拡大し、年平均成長率は7.3%に達した。高齢者の消費ニーズも多様化・高度化が進み、ファッション性や利便性を重視する傾向が強まっている。
しかし、供給側の課題も依然として残る。サービスの質の見極めが難しいことや、情報の不足、需要と供給のミスマッチなどが、高齢者消費の拡大を制約している。
こうした中、オンライン化の動きも加速している。北京市民政局は生活サービス大手の美団と連携し、「プラットフォーム+介護」の新たなサービスモデルを推進。通院付き添いや在宅介護、病院付き添いなどの需要が大きく伸びている。2025年末時点で、同プラットフォーム上の介護サービス利用者数は前年比で2倍以上、取引規模は約3倍に拡大した。
介護サービス事業者の間でもオンライン展開は進んでいる。例えば、福寿康は参入から半年で主要カテゴリーの上位に入り、現在では北京で約40店舗を展開。売上の約半分をオンライン経由が占めるまでに成長している。

業界関係者は「高齢者本人だけでなく、その子ども世代がオンラインで情報収集し、サービスを選択するケースが増えている」と指摘する。現在、同種のサービスは全国300以上の都市に広がり、3万を超える事業者が参入している。
専門家は「プラットフォームの役割は単なる仲介ではなく、サービスの透明性と信頼性を高めることにある」と強調する。政府による参入管理やサービス基準の整備に加え、プラットフォーム側も情報の正確性や評価制度の信頼性確保、高齢者に配慮した操作設計などの責任を担う必要があるとしている。
このように、一時預かり型の介護サービスや体験型消費、オンライン化の進展といった新たな取り組みは、高齢者の多様なニーズに応えると同時に、「銀髪経済」の潜在力を引き出す重要な鍵となりつつある。
(中国経済新聞)
