世界的に人工知能(AI)向け計算インフラの整備が急速に進む中、大容量かつ高い安定性を備えた電力供給の重要性が一段と高まっている。こうした流れの中で、電力設備の中核を担う変圧器は、AI計算クラスターの「生命線」とも言える存在となりつつある。
中国の広東省や江蘇省などで取材したところ、多くの変圧器メーカーがすでにフル稼働の状態にあり、データセンター向けを中心とした一部製品では、受注が2027年末まで埋まっていることが分かった。
AIデータセンターの急増により、変圧器は世界的に不足する状況となっている。米国市場では、変圧器の納期が従来の約50週間から、最長で127週間へと大幅に延びているという。
広東省仏山市にある電気設備メーカーでは、主力製品である乾式変圧器をデータセンター用途として生産しており、輸出向け受注も急速に拡大している。同社の営業責任者は「欧米メーカーと比べると、当社の納期は約5分の1程度に抑えられている。現在は受注が非常に好調で、将来的には海外売上高の比率を50%以上に引き上げたい」と話す。
こうしたフル稼働状態は長江デルタ地域でも見られる。江蘇省のある変圧器工場では、製品の受注がすでに2027年末まで入っており、中国国内で初めてとなる全絶縁・超高圧・大容量変圧器が、最近北米向けに出荷された。

業界統計によると、中国の変圧器関連企業は約3000社に上る。2025年の変圧器輸出額は646億元に達し、前年比で約36%増加した。中国電力企業連合会は、中国がすでに世界最大の変圧器生産国であり、最も完備された生産体制を構築していると指摘する。生産能力は世界全体の約6割を占めるという。
変圧器需要の急増の背景には、AI関連施設による電力使用量の大幅な増加がある。中国ではデータセンターやスーパーコンピューター群の建設が本格化しており、「東数西算」プロジェクトの推進と相まって、変圧器は名実ともに「電力の心臓」として重要な役割を担っている。
北京市麗沢金融ビジネス地区では、500キロボルト送変電プロジェクトが着工し、北京南部の電力供給能力を大きく引き上げる見通しだ。安徽省蕪湖市の国家算力拠点でも、220キロボルト送変電設備が稼働を開始し、国産変圧器の導入によって電力供給の信頼性が高められている。
2025年、広東省におけるデータセンターの電力使用量は前年比で約30%増加し、韶関市の算力集積地では、電力需要の伸びが50%を超える月が続いている。全国的にも算力関連産業団地の建設が相次ぎ、2025年の国内変圧器市場規模は前年比20%以上の成長を記録した。このうち、AI算力や超高圧送電関連の高付加価値製品が35%以上を占め、産業成長の原動力となっている。
AI向け超大規模計算システムでは、電力品質に対する要求が極めて高い。中国の変圧器産業は、固体変圧器や高周波変圧器といった次世代製品の研究開発を加速させ、再生可能エネルギーとの適合性を高めながら、世界の算力市場での競争力強化を図っている。
AI算力インフラの整備、エネルギー転換、電力網の高度化という三つの需要が重なり、変圧器は世界的に「戦略物資」とも言える存在になりつつある。銅や珪素鋼といった原材料から、部材加工、完成品製造に至るまで、中国は世界で最も完結度が高く、効率的な変圧器産業チェーンを構築しており、技術革新とともにその国際的存在感を一段と高めている。
(中国経済新聞)
