中国経済は2026年、「十五五」計画(第15次5か年計画=2026~2030年)の開幕年として、これまでにない試練とチャンスを迎えている。
「十五五」計画は、中国共産党中央委員会第20期第4回全体会議で採択されたガイドライン的文書であり、コロナ禍からの回復であった「十四五」(第14次5か年計画=2021~2025年)から質の高い発展の新段階への移行を示すものである。計画では、中国政府は「投資で成長を促進する」ことを強調し、インフラ投資の拡大を通じて経済予想を安定させ、供給能力を向上させるとし、国家電網は2026年1月15日、「十五五」期の固定資産投資を「十四五」期より約1兆元(約22・6兆円)増しの4兆元(約90兆円)とする予定と発表した。この投資は主にAI電力網、分散型エネルギー、新エネルギー接続設備といった新規電力システムの整備に充てられる。投資規模は2025年のGDPの約4%に相当する巨額なものである。
2026年の財政予算案で、インフラ投資の割合は30%以上を占め、高速鉄道、空港、都市部の軌道交通、治水工事などに当てられる。政府の論理は「投資が迅速に効果を発揮し、雇用を創出し、将来の経済成長の基盤を築く」というものである。例えば電力網への投資は電力供給の信頼性を高めるだけでなく、電気自動車やデータセンターなどの新興産業の拡大を支援し、間接的に経済成長を刺激する。
こうした投資主導モデルは歴史的に見て、中国経済を飛躍させる重要な役割を果たしてきた。中国は改革開放以来、大規模なインフラ建設(三峡ダムや高速鉄道網など)を通じて年平均9%以上の成長率を実現した。コロナ禍に見舞われた2020年代初めも「両新一重」(新型インフラ、新型都市化、重大プロジェクト)投資で経済を安定させた。しかし2026年、この戦略は新たな課題を迎えている。地方政府の債務が100兆元(約2268兆円)を超え、高額の投資でこの財政危機がさらに拡大する恐れもある中、投資効率が漸減傾向にあって多くのプロジェクトは収益率が低く、資源の誤配分を招いている。政府は「以旧換新」(使用済み品下取り買い替え)政策で投資と消費を結びつけようとしているが、これらは短期的な刺激に過ぎず、投資主導の構造を変えることはできない。
政府の公共投資規模が巨大であるにもかかわらず、民間企業の大多数はこれらの恩恵を受けられず、むしろ「生き延びるのに必死」という苦境に陥っている。これは主に投資先が国有企業と大型インフラプロジェクトに流れ、民間企業にとってハードルが高く融資が難しいためだ。2025年上半期、民間企業の固定資産投資の増加率はわずか2・5%で、国有企業の8・7%を大きく下回った。多くの中小企業はコロナ後遺症、不動産低迷、貿易障壁という多重の圧力で資金繰りが苦しくなり、倒産率は過去最悪となった。
また消費市場も低迷しており、明らかな「消費のレベルダウン」傾向を示している。国民の消費意欲の低迷は主に、所得予想が不安定であることと資産が縮小していることが理由である。中国は2025年、GDPに占める個人消費の割合は39%で、先進国の60%以上を大きく下回った。政府は家電や自動車を対象とし、拠出額数千億元(数兆円)という「以旧換新」政策を打ち出したが、効果ははかばかしくなく、消費は高級品から低価格品へと流れていく傾向が強い。
中国統計局によると、2025年第3四半期、一般消費財の小売総額は前年同期比3・2%増にとどまり、飲食や観光などのサービス消費が明らかに低下した。多くの民衆は「躺平」(寝そべり)消費を選び、必需品以外の支出を減らして潜在的な経済の不透明性に対処している。
この苦境の根源は構造的不均衡にある。中国経済は長らく投資と輸出に依存し、消費は弱体化の一途である。コロナ禍の後で不動産市場が崩壊、住民の富効果が弱まり、中産階級の自信が薄れていった。同時に失業率も高止まりし、消費の潜在力をさらに抑制している。雇用の主力である民間企業の苦境で個人所得がダメージを受け、多くの企業が賃下げやレイオフを実施し、可処分所得が減少した。この結果、消費市場は悪循環に陥り、需要の不足で企業の在庫が増大し、倒産のリスクがさらに高まっている。
こうした中、政府の投資で短期的にはGDPを牽引できるが、民間企業の生存問題や消費の低迷は解決に至らない。よって経済学者は、「消費の主導」という現実的基盤を主張している。「中国経済は『投資依存症』から脱却し消費拡大にシフトすべきだ」と強く異議を主張している。
林毅夫氏や余永定氏などの著名な経済学者は2026年、「経済成長の重心を供給側から需要側へ移すべき」と繰り返し主張している。林氏はメディアの取材に対し、「投資は手段、消費こそが目的だ。所得が中間レベルに突入している中国は、単なるインフラ投資では『中間所得の罠』を越えられない。財政移転の支出で低所得層に現金を支給し消費力を高めるべきだ。」と強調し、この見方はかなりの共感を招いた。また同じく経済学者である張維迎氏は、「政府の投資はしばしば低効率で、資源が国有企業に流れて民間企業はドロップアウトしていく。減税や負担軽減により市場で資源の配分がまとまり、消費でイノベーションを牽引すべきだ。」と批判している。
これら経済学者の主張する「消費拡大」措置は具体的に以下の4点である。
一、現金支給。低・中所得の世帯に買い物券や「デジタル人民元紅包」(お年玉)を支給する。
二、社会保障体系の整備。年金・医療保険の給付率を上げ、個人預金を削減する。
三、収入再分配。税制改革で貧富の格差を縮小し中間層の消費力を引き上げる。
四、新たな消費の後押し。「消費のレベルダウン」を回避する。
「投資VS消費」の論争は、本質的に中国経済モデルとして「政府主導・投資牽引の従来路線継続」、「市場誘導・消費主導の新路線」のいずれかの選択である。この論争が及ぼす影響はかなり深いと思われる。投資主導継続なら短期的な成長は確保できるが長期的には不均衡が悪化し、消費主導なら財政改革が必要で、痛みを伴うが長期的にはプラスになる。「十五五」幕開けとなる 2026年、この駆け引きが中国経済の行方を決めることになる。
(中国経済新聞)
