中国を代表する電動二輪車メーカー、ヤディ科技集団有限公司(YADEA、以下、ヤディ)は、2025年11月に日本市場で初の電動二輪車を発売する計画を発表した。ヤディ日本は、初のモデル発売に向けたプロモーションを展開中だ。公式ウェブサイトで9月19日に公開された声明では、「ヤディが安いのではない、日系車が高すぎる」と強調し、価格競争力への自信を示した。
ヤディは、1997年に董経貴夫妻によって設立され、本社は江蘇省無錫市に位置する。電動自転車、電動スクーター、関連部品の研究開発、製造、販売を専門とし、「高品質でインテリジェントな移動手段の提供」を使命に掲げる。環境に優しい交通手段の推進を目標とし、中国国内の電動二輪車市場でトップシェアを誇る。2023年には売上高310億元(約6200億円)を超え、製品は米国、ドイツ、東南アジアなど100以上の国と地域に輸出されている。グローバル市場でも強力な地位を確立し、中国市場の巨大な需要を背景に、世界最大の電動二輪車製造・販売企業へと成長した。

今回発売されるモデルは、中国国内で販売中のモデルを日本向けに改良したもので、価格は19.8万日元(約9500人民元、約1300米ドル)。日本経済新聞の9月19日報道によると、日本ブランドの本田技研工業やヤマハ発動機の電動二輪車は、最も安価なモデルでも約30万日元である。ヤディの製品は、これに比べ明確な価格優位性を持つ。ヤディホールディングス日本は、長年にわたる電動二輪車分野での経験蓄積と、他社を大きく上回る販売規模により、この価格を実現したと説明する。
日本での電動二輪車市場参入は、厳格化する排出規制による市場変化が背景にある。日本自動車工業会(JAMA)によると、2025年11月1日から新たな排出基準が施行され、排気量50cc以下の小型燃油バイクの生産が終了する。これにより、小型燃油バイク市場が縮小し、電動二輪車への需要が高まると予想される。JAMAの2024年9月データでは、2023年の日本国内のバイク販売台数は40.5万台で、そのうち50cc以下の小型バイクが9.3万台を占め、全体の約23%に相当する。
ヤディホールディングス日本は、小型燃油バイクが日本の一般市民の主要な移動手段であったと指摘。生産終了後、部品供給も停止し、在庫が枯渇すれば修理が困難になる。これにより、小型バイク市場の縮小が電動二輪車の市場拡大の好機となると見込む。
新車発売に合わせ、ヤディ日本は7月22日、関西地区に初の直営店舗を開設すると発表。10月1日から営業を開始し、電動バイク、電動アシスト自転車、電動スクーターなどを販売する。これにより、日本市場でのブランド認知度向上と販売網構築を目指す。
中国市場では、ヤディの電動二輪車は圧倒的なシェアを誇る。2024年の年間販売台数は1300万台、2025年上半期は879.35万台に達した。奥維雲網(AVC)の7月データによると、2025年上半期の中国市場でのシェアは26.3%。この大規模な生産・販売能力が、コスト削減と競争力の源泉となっている。
日本市場は、本田、ヤマハ、鈴木、川崎といった燃油バイクを主力とする国内企業が支配してきた。しかし、排出規制の強化と環境意識の高まりにより、電動二輪車への移行が加速する中、ヤディの低価格かつ高品質な製品は大きな注目を集める可能性がある。特に、50cc以下の小型バイクの代替として、ヤディの電動二輪車は価格と実用性で訴求力を持つ。
(中国経済新聞)