米NASA、中国人のプロジェクト参加禁止を発表

2025/09/12 11:00

ブルームバーグは9月10日、複数の関係者の話として、アメリカ航空宇宙局(NASA)がアメリカのビザを持つ中国人のプロジェクト参加禁止を決定したと報道した。NASA報道官もこの情報を確認しており、「安全強化のため」と称している。

アメリカ国会は2011年に、宇宙開発分野における米中間の協力内容について、NASAと中国の機関またはホワイトハウス科学技術政策局による研究活動での協力の禁止を定めた「ウォルフ条項」を成立させている。しかしこれまで、現地で研究に参加している学生や大学関係者、あるいはNASAの外注先など、アメリカのビザを持つ中国人に対して一定の形でNASAのプロジェクト参加を認めていた。ところが9月5日から、これらの中国人の一部がITシステムから遮断された上、研究関連の会議についてオンラインでも対面でも出席を禁じられているという。

これについてNASAのベサニー・スティーブンス報道官は、「研究活動の安全性を確保するため、中国人に対して施設、資料、ネットワークへのアクセス制限といった『内部措置』を講じている」と述べた。

NASAがこのような動きを講じた背景として、このところ様々な重圧を抱えていることが挙げられる。最近中国が月探査事業で大きな進展を見せており、2020年には「嫦娥5号」が月の土壌サンプルを地球に持ち帰り、2025年の「中国宇宙の日」のイベントで、アメリカのブラウン大学やニューヨーク州立大学ストーニーブルック校など7つの海外研究機関におけるこのサンプルの貸与申請が認められたと発表した。ところが「ウォルフ条項」により、NASAはこれらの事業について資金援助ができない。

アメリカ国会のブライアン・バビン議員は今年2月、ワシントンで行われた宇宙ビジネス会議で、「アメリカは中国より先に月に再着陸しなくてはならない」と述べている。また8月にはNASAの暫定局長であるショーン・ダフィー運輸長官が、「月面での原子炉建設計画を早期実行する」と発表している。アメリカのメディアはこうした動きについて、「中国が2030年までに有人の月着陸を予定していることと関わりがある」と伝えている。

内部文書によると、ダフィー運輸長官は9月4日にNASAの職員を前にした演説で、「アメリカは必ず中国より先に月に着陸する」と強調した上、いわゆる「第二次宇宙競争」に勝つ、と宣言した。ただしアメリカ国内の一部専門家はこれについて慎重な見方である。参議院のある公聴会で、「中国は月着陸に向けて目標がはっきりしており、足並みをそろえているが、アメリカは政権交代などにより政策が途切れることもあり、長期タスクの実行に支障が出ている」との指摘があった。NASAの元長官であるブライデンスタイン氏も、「アメリカの今の月着陸体制はSpaceXへの依存が強すぎ、改めないと中国のスピードには追いつけない」と警告している。

(中国経済新聞)