中国の白酒(パイチュウ)メーカー、今後歩むべき道のりは?

2025/09/5 07:30

2025年5月に「新禁酒令」が打ち出された中国では、ビジネスの接待における高級白酒(パイチュウ)に依存していた酒造業界の売上高が急速にしぼみ、この上半期は不振を極めた。

中国酒業協会によると、白酒メーカーの数はこの半年間で100社減って887社となり、白酒の生産量も前年同期より5.8%減って191.59万キロリットルであった。業界全体では、売上高は0.19%の微増で3304.2億元であったが利益は10.93%減って876.87億元となった。こうした数字の背後に、「量・価格ダウン、在庫増、消費の多様化」といった現実が潜んでいる。

一部大手はそれでもプラス成長を果たした。貴州茅台はこの上半期、売上高は前年同期比9.1%増の893.89億元、純利益は同じく8.89%増の454.03億元で、五粮液は売上高が4.19%増えて527.71億元、純利益は2.28%増えて194.92億元であり、汾酒は売上高が5.35%増の239.6億元、純利益は1.13%増の86.05億元であった。大手6社で見ると、売上高の合計額が2130億元で業界全体の8割以上を占め、利益合計額は同じく86%に達した。

一方、典型例として、湖南省の酒造会社である酒鬼酒は上半期の売上高が前年より43.54%も減って5.61億元、純利益は実に92.6%落ち込みわずか0.09億元であった。華潤啤酒の出資を受けた金種子酒業も漸落に歯止めがかからず、売上高は27.47%減の4.84億元で、収益減少幅が7倍以上増えて0.72億元の赤字計上となった。さらに皇台酒業は売上高0.58億元、岩石股份は0.28億元にとどまり、岩石股份は前年比85.22%のマイナスであった。

中国酒業協会の「2025中国白酒市場中期研究報告」によると、販売店のうち58.1%が今年上半期は在庫増となり、業界全体における在庫回転日数の平均値は前年より10%増えて900日に至った。在庫金額が最も多いのは貴州茅台で、全体業界の3分の1にあたる549.72億元であった。また洋河、五粮液、瀘州老窖、汾酒も100億元以上の在庫を抱えている。金種子酒、口子窖、舍得酒業は在庫割合が45%以上となっているが、売上高は減少の一途である。

契約負債額を見ると、A株(中国株)上場の白酒メーカー20社の合計は前年比2.5%減の375.87億元で、うち茅台は44.86億元減で4位に後退した。古井貢酒、老白干酒、酒鬼酒などは30%以上減っている。

不況にあえぐ中、大手各社は2025年、「在庫減らし」を最優先課題に据えている。五粮液は今年前半の期末在庫が前年同期より46.68%減っているが、高級酒は逆に41.26%増えており、在庫の消化はおおむね一般品種頼みとなっている。

またこの業界では、消費者の層の変化に伴って見通しが大きくぶれてくる。25~35歳の若い世代はおおむね白酒を「敬遠」しており、付き合いの場ではビールや発泡酒、カクテルを愛飲している。健康志向が強まっていることで、度数が低く、果実風味でおしゃれなアルコールを求めるようになった。データを見ると、度数の低い白酒の市場シェアは2020年の30%から2024年には35%に増えている。

こうした変化に合わせ、茅台推出はアルコール度数43度の「飛天」を、五粮液は39度と45度のものを発売するなど、大手各社が低度数の品種を打ち出している。また瀘州老窖は38度の「国窖1573」の売上高が国窖シリーズのほぼ半分に達しており、若い消費者を呼び込もうと28度の品種を開発する予定もある。

また営業面では、五粮液が中華圏の歌手タン・チーケイをグローバルキャラクターとして起用し、若者たちの趣味に結びつけるという新たな試みをしている。

白酒業界は今、「在庫競争の時代」に突入したと見られている。各社メーカーとも今後は、商品の刷新や営業策を通じて若い世代の人気を獲得することが課題となる。アルコール度数が低めで健康的で多様化、こうした傾向が続くことになろう。

(中国経済新聞)