浙江省紹興市にある魯迅記念館の「喫煙する魯迅」を描いた壁画が、観光客から青少年への誤った影響を及ぼすとして問題視されている。この壁画は、ネット上で人気のチェックインスポットとして知られているが、観光客の孫さん(女性)が8月22日、浙江省政府にこの壁画が不適切だと訴え、変更を求めた。
孫さんは、自身が禁煙ボランティアであると明かし、公共の場での禁煙問題に普段から関心を寄せていると述べる。彼女が問題視したのは、魯迅記念館の屋外に設置された、魯迅がタバコを手に持つ姿を描いた壁画。この壁画は、魯迅が自宅で喫煙している原画を基にしているが、背景が取り除かれている点が問題だと指摘。孫さんは、「原画は魯迅が室内で喫煙している場面だが、壁画では屋外で喫煙しているように見える。これが屋外での集団喫煙を助長し、他人の健康を害するリスクがある。また、青少年に誤った影響を与える恐れがある」と主張し、壁画の変更を要求。

孫さんがこの問題に気付いたきっかけは、8月20日にソーシャルメディアで見た投稿だ。彼女は、「プラットフォームで、魯迅の喫煙版画の前で女性が両手をクロスさせて禁煙を訴える画像を見た。それで初めて、この大きな屋外広告版の喫煙壁画の存在を知った」と振り返る。苦情の信憑性を高めるため、孫さんは魯迅の版画を調査。原画では煙の描写が小さく、書斎の背景が含まれていることを発見。「原画は魯迅が室内で喫煙しているもので、公共の場での喫煙ではない」と強調。現在、孫さんはこの問題について2度目の苦情を提出している。
紹興市政府は、孫さんからの苦情を受け、「現在対応を検討中」と回答。現時点で具体的な対応策や壁画の変更についての詳細は明らかにされていないが、公共施設におけるこのような問題は、市民や観光客の関心を集めている。
魯迅記念館の喫煙壁画は、魯迅のイメージを現代的かつ親しみやすく表現したものとして、若者を中心に人気のフォトスポットとなっていた。しかし、公共の場での喫煙描写が、禁煙意識の高まる現代社会において議論を呼ぶ結果に。近年、中国では公共の場での禁煙を推進する動きが強まっており、特に青少年への影響を考慮した取り組みが重視されている。孫さんのような禁煙ボランティアの活動も、こうした社会的な背景に支えられている。
一方で、魯迅は中国近代文学の巨匠として、喫煙を含む彼の生活習慣が歴史的な文脈で描かれることも多い。この壁画が、魯迅の個性を表現するアートとしての価値を持つ一方で、公共の場での適切さについて再考を迫る議論が起きている。
(中国経済新聞)