南京市バス、「昼は乗客、夜は貨物」で自救の道を開く

2025/07/22 09:30

南京市のバスが、革新的な「バス+宅配」モデルを導入し、注目を集めている。南京晨報によると、六合区と南京市中心部を結ぶ重要路線である503線バスは、六合北駅から鼓楼バス総駅までを往復し、60以上の停留所を結ぶ。このほど、毎日15時30分頃に六合北駅を出発する便が、乗客輸送に加えて六合産の農産物や生鮮食品などの宅配便を南京市中心部へ運ぶ新たな役割を担うようになった。

この「バス+宅配」モデルにより、従来は翌日配送だった宅配便が、わずか2時間半で南京市中心部に到着し、当日中に消費者の手に届くようになった。南京市バスのこの取り組みは、地域の農産物を迅速に都市部へ届けることで、農家の販路拡大と消費者ニーズの両方に応える画期的な試みだ。

南京の事例は全国初ではない。2024年9月以降、西安、武漢、蘭州、成都、鄭州などの都市でも同様の「バス+宅配」モデルが導入され、バス業界の新たな可能性を示している。特に鄭州市では、ネットユーザーが「昼は乗客、夜は貨物」と題したバスの写真を公開し、「遊休資源を活用し、都市バスの復活の道を切り開いた」と話題になっている。

南京市バス503バスは、六合区の住民にとって市中心部への移動手段として欠かせない存在だ。しかし、コロナ禍やライドシェアサービスの普及により、バス利用者が減少する中、運行コストの圧迫が課題となっていた。この新モデルは、バス車両の空き時間を有効活用し、収益源を多様化することで、路線バスの持続可能性を高める狙いがある。

地元住民からは、「農産物が新鮮なうちに都市部に届くのは素晴らしい」「バスが地域の経済を支える存在になって嬉しい」といった声が寄せられている。一方、ネット上では「これぞイノベーション!バスがただの交通手段じゃなくなった」との好意的な反応も多く、都市バスの新たな可能性に期待が高まっている。

中国各地での「バス+宅配」モデルの成功は、公共交通の再定義を促している。都市バスの遊休時間を活用することで、物流コストを抑えつつ地域経済を活性化するこの取り組みは、特に農村部と都市部をつなぐ路線で大きな効果を発揮している。専門家は、「バスは単なる移動手段ではなく、物流や地域振興のプラットフォームになり得る」と評価する。

南京市バス公社は、今後さらに多くの路線でこのモデルを展開する計画だ。また、AIやデータ分析を活用した配送スケジュールの最適化や、電動バスとの連携による環境負荷低減も視野に入れている。南京の503系統が切り開いた「昼は乗客、夜は貨物」の道は、中国の公共交通に新たな息吹を吹き込む可能性を秘めている。

(中国経済新聞)