6月26日、小米グループ(Xiaomi)は、同社初の中大型純電動SUV「小米YU7(シャオミ・ワイユーセブン)」の正式販売を開始し、発売からわずか1時間で29万台近くを売り上げたことを発表した。予約開始から3分で20万台を超えるという驚異的な勢いで、中国EV市場に衝撃を与えた。
小米YU7は、標準版25.35万元(約510万円)、Pro版27.99万元(約560万円)、Max版32.99万元(約665万円)という3つの価格帯で展開。小米グループ創業者でありCEOの雷軍(レイ・ジュン)氏は、前夜のSNS投稿で「SUV市場こそが本当の戦場」と語り、本モデルが小米汽車にとって“最初の大考”であると位置付けた。
中国市場では近年、SUVの人気が急上昇しており、2023年にはSUVの年間販売台数が初めてセダンを上回った。YU7は中大型SUVでありながら、中型SUV価格帯に挑む姿勢を見せており、特に家庭層や女性ユーザーのニーズに焦点を当てた設計が注目されている。

YU7は9色展開で、最大1970Lの収納スペースを実現。車内には36箇所の収納エリアを備え、前席には13.7Lのパスコード付きグローブボックス、後席には135度リクライニング対応の座席と独立引き出しを装備。141Lの前部トランクには24インチスーツケースが収まる設計で、電動開閉にも対応している。
さらに注目すべきは、車外から音声操作できる「小愛同学(シャオアイ・トンシュエ)」機能。声紋とデジタルキーの二重認証により、安全性と利便性を両立している。
パフォーマンス面では、0-100km/h加速が2.98秒(起動時間を除く)とスポーツカー並みの性能を誇る。快適性の面でも、全車Nappaレザーシートを採用し、Max版には10点マッサージ機能付きゼログラビティシートを装備。30ヶ所以上に防音素材を使用し、雷軍氏は「ロールス・ロイス カリナンに匹敵する静音性」と自信を示した。
また、ECスマート調光ガラスや車酔い軽減モードなど、「蒸し風呂状態」と揶揄されがちな夏の車内問題にも独自技術で対応。赤外線と紫外線の99.9%カット、99.85%の遮光率を誇る。
昨今、小米汽車は高速道路での死亡事故や「高額ボンネット」論争など、イメージに打撃を受ける事件もあったが、YU7の成功はブランド回復の象徴とみなされている。雷軍氏は「100万元(約2010万円)以下でこのレベルの車は他にない」と語り、小米SU7での安全評価「グランドスラム」獲得に続き、YU7も安全性に万全を期していると強調。
この圧倒的な販売実績と市場からの支持は、小米一社の成功にとどまらず、中国自動車産業全体のイノベーションと技術力の象徴としても注目を集めている。Model Y級の価格でポルシェ級の体験を提供する——中国勢の挑戦は加速し続ける。
(中国経済新聞)