中国、家電販売が急伸、「以旧換新」が生んだ消費の新たな波

2025/06/16 14:13

6月16日午前、中国の国務院新聞弁公室が2025年5月の国民経済の運行状況に関する記者会見を行った。その場で国家統計局の報道官・付凌暉氏が語った言葉が、市場関係者の注目を集めた。

「家電製品の販売額が前年同月比で53%も増加しました」。この数字が示しているのは、単なる景気回復ではない。背後にあるのは、「以旧换新(古い製品を新製品に買い替える)」という政策の持つ強い推進力である。

2025年5月、中国の社会消費品小売総額は4兆1326億元に達し、前年同月比で6.4%増加。前月よりも1.3ポイント伸び、環比でも0.93%増という堅調な結果となった。1〜5月の累計では、総額は20兆3171億元、前年同期比で5.0%の成長を見せている。

注目すべきは、限額以上の企業(すなわち規模の大きな小売業者)による家電製品の売上が前年同月比で53.0%と急増した点である。これは単にエアコンのシーズン需要や割引キャンペーンによるものではなく、明確に政府が推進する「以旧换新」政策の成果とみられている。

この政策は、中国政府が今年初頭から段階的に導入を始めたもので、対象となる製品を新しく買い替える際に補助金や減税などのインセンティブを与えるというもの。対象は家電だけにとどまらず、通信機器や家具、文化・事務用品にも拡大されている。

実際、5月の小売データを見ると、音響・映像機器類は33.0%増、通信機器類は30.5%増、文化・オフィス用品類は25.6%増、家具類も25.6%増と、いずれも大幅な伸びを記録している。中国全体としてはまだ個人消費の回復にはばらつきがある中で、こうした政策主導の分野においては非常に明るい兆しが見えつつある。

また、オンライン販売も堅調である。1〜5月の全国ネット小売額は6兆402億元(約121兆円)、前年同期比で8.5%の成長。その中でも実物商品の販売は4兆9878億元(約100兆円)、6.3%増となり、全体の小売のうち24.5%を占めている。

このように見てくると、中国の消費回復は「政策主導型」と「デジタル主導型」が二本柱となっていることがわかる。特に家電製品に関しては、今後も「以旧换新」の恩恵を受けた買い替え需要が続くとみられており、関連企業にとっては重要な成長機会となるだろう。

一方で、こうした成長がどこまで持続可能かについては冷静な視点も必要だ。というのも、買い替えという行動自体が一度きりである可能性が高く、「その先」の需要創出にはもう一段の工夫が求められるからである。たとえば、省エネ性能の高い製品へのシフトや、スマート家電との連携、新たなライフスタイル提案といった付加価値が鍵になる。

今後、家電業界にとっては単なる製品開発だけでなく、「使用体験そのものの再設計」が重要になる時代がやってくるのかもしれない。

(中国経済新聞)