中国の大学3年生、李薇さんは、生活関連アプリから10か所余りの「コスパのいい」入浴施設の情報を集めた。「100元(約2000円)払えば12時間滞在できる。果物や飲み物も無料、ゲームをしたり映画を見たり。入浴施設は今、ユースホステルよりずっと割安だ」という。今、若者たちの間で、電子ゲームや卓上ゲーム、KTV、映画鑑賞が楽しめる新型の入浴施設がコスパのいい宿として人気を集めている。
入浴サービス事業について、業界内では2025-2030年が全般的に大きく成長する時期と見られており、消費の格上げや技術革新、国からの支援で過去にない盛況を迎えるという。

中国全体で見ると、これら入浴や足裏健康などに対する好みは地域によって異なる。都市部では、一線および新一線の地域では成長が緩やかであるが、三線以下の都市では40%以上の急速な伸びを示す。東北部や華南では皮膚こすりが、華北では灸が好まれ、さらに華東や西北部では正骨指圧、華中や西南部では指圧やマッサージをする人が多い。体形の矯正やスポーツリハビリといった新種の理学療法は東北、華北、華南で人気を集めている。
またその利用者については、女性、若者が増え続けて主要な客層になっている。生活アプリの「美団」によると、女性や若者(1995-2009年生まれの「Z世代」)で理学療法を受ける人が急増しており、若いころから健康に気を配る人が増えている。
入浴施設の利用者も若年化が目立ち、若者が主要ターゲットとなっている。閑散期は大学生が利用者の中心となり、若者のうち12~25歳は前年より242.86%の増加、大学生は同じく162.26%の増加と急激な伸びを示している。
消費について、若者たちはコスパや確定性(オンライン予約で利用日や内容を確定する)を、こだわりのある人はトータル的なサービス(食事が充実した映画館型の足裏健康法など)を求める傾向にある。

中研普華産業研究院の「2025-2030年中国入浴サービス業界市場現状分析および発展前景予測報告」によると、入浴施設の市場規模は間もなく700億元台に達し、今後も年間10%-12%の割合で伸び続けて2030年には2000億元(約4兆円)の大台に達すると予測している。その理由として、まず消費構造の格上げでこの業界が「基本衛生」から「ヘルスケア」といった形に変化していることが挙げられる。2025年は、ヘルスケア事業を手掛ける業者の割合は2020年よりも18ポイント増えて35%に達した。温泉療法、漢方マッサージ、アロマSPAなど付加価値のある事業が成長を支えており、高級な施設では客単価が800元を超え、年間利用回数が12回以上という固定客が拡大しつつある。また、利用者層の変化も理由に挙げられる。この中でZ世代は全体に占める割合が2020年の22%から2025年には28%に増え、今や主力となっている。味わい感にこだわるこの世代をにらんで、「入浴+社交性」「入浴+電子ゲーム」といった新手の店も現れ始めている。美団によると、2025年は入浴場所で「女子会」「会社の親睦活動」といった言葉の検索数が前年より230%も増えており、交流の場といった性質を帯びるようになっている。
中国の企業情報サイト「企査査」によると、2020年~2025年、入浴関連企業(会社名、事業内容、商品名に「温泉、湯泉、入浴、足裏健康、フットバス、シャワー、風呂」といった言葉を含む)について、年間登録数は2020年の15.65万社から2023年には21.69万社に増え、2024年はやや減って20.61万社であった。また現有社数は同じく2020年の69.51万社から2025年6月には105.11万社に増えている。
(中国経済新聞)