中国EV大手・NIO、設立11年で累積赤字2.8兆円

2025/06/14 11:30

中国の新興電気自動車(EV)メーカーとして注目を集めてきた蔚来汽車(NIO)が、創業から11年目に突入した今、厳しい現実に直面している。

2024年第1四半期の決算でNIOは675億元(約1兆4,000億円相当)の赤字を計上し、前年同期比で約30%赤字が拡大。これにより、累積赤字は1,300億元(約2兆8,000億円)を突破する結果となった。

同社の創業者でありCEOの李斌(ウィリアム・リー)氏は今年4月、「2024年末までに四半期黒字化を実現する」と豪語していたが、その自信とは裏腹に、業績は過去最悪の水準に沈んでいる。

中国のSNS上では、NIOの将来性に対する懐疑的な声が相次いでいる。「NIOに未来はない」というフレーズがネットミームのように拡散され、2024年2月のライブ配信中には、李斌氏が視聴者から「NIOはいつ倒産するのか?」と直球で問われる一幕もあった。

このような冷たい目線の背景には、NIOが誇る“ユーザー至上主義”のサービスモデルがある。

感動のサービス、しかしコストは雪だるま式に。

NIOは自社の顧客向けに以下のような充実したサービスを提供している:

                 •               ラグジュアリーなNIO Houseで提供される無料のコーヒー

                 •               24時間対応の運転代行サービス

                 •               無料洗車や誕生日ギフト、年会費免除

                 •               さらには700キロ離れた地域への無償ロードサービス

これらは確かに「顧客第一主義」を体現しているが、同時に極めて高コストな運営モデルでもある。

現在、NIOのユーザー数は約76万人。サービスにかかるコストは年々膨れ上がっており、もし今後200万台、500万台とユーザーが増えた場合、このサービスモデルを維持するのは不可能に近いという指摘が出ている。

NIOのもう一つの特徴が、他社と一線を画す“バッテリー交換”方式(Swap Model)だ。わずか3分でフル充電状態のバッテリーに交換できるという点で一時注目されたが、これが同社にとって持続的な重荷となっている。

通常の充電モデルでは、ユーザーがバッテリーを購入し、その後のメンテナンスは基本的に自己責任となる。一方、NIOのバッテリー交換モデルでは、全バッテリーの購入・維持・交換コストをNIOが背負い続ける必要がある。さらに、交換ステーションの建設・運用費用も膨大だ。

これまでにNIOは、数百億元規模の投資を換電ネットワークに費やしてきたが、超急速充電技術の急速な進化により、その優位性は急速に失われつつある。

たとえば、最近では「10分の充電で400km走行可能」なEV技術が登場しており、これが普及すれば「3分で交換」するNIOの魅力は相対的に薄れる。そうなれば、同社が築いてきたインフラは“サンクコスト(埋没コスト)”として回収不能になるリスクもある。

NIOが抱える課題は、単なる赤字額の問題ではない。成長モデル自体に無理があるのではないかという根本的な疑問が浮かんでいる。

中国EV市場は依然として競争が激しく、BYD(比亜迪)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng)などが、技術革新と価格競争で急成長を遂げている。NIOもこれらのライバルと同じく政府補助金に頼ってきたが、赤字脱却には構造的なビジネスモデルの見直しが必要だ。

(中国経済新聞)