2018年、理想汽車(Li Auto)は「移動する家」をコンセプトに、増程式電気自動車(EREV)の理想ONEを発表した。当時、この新興自動車メーカーがわずか数年で中国の新エネルギー車(NEV)市場のトップに躍り出るとは、誰も想像していなかった。2024年、理想汽車は年間販売台数50万台超を達成し、売上高1445億元(約2.7兆円)を記録。中国の新勢力メーカーとして初の「販売王」に輝いた。しかし、2025年5月29日に発表された2025年第1四半期の決算報告は、その輝かしい成功に冷や水を浴せるものだった。
売上高は259.3億元(約4870億円)で前年比1.1%増と微増を維持したが、調整後の純利益は10.2億元(約192億円)で前年比20%の大幅減。さらに、連続する利益減少傾向が明らかになった。納車台数は92,864台で前年比16%増を記録したが、小鵬汽車(Xpeng)や零跑汽車(Leapmotor)に抜かれ、販売王の座を明け渡した。かつて「目を閉じていても勝てる」と言われた理想汽車は、今、「理想は大きく、現実は厳しい」という苦境に直面している。
理想汽車の2025年第1四半期決算は、一見すると堅調な成長を維持しているように見える。売上高259.3億元は市場予想の251.2億元をわずかに上回り、納車台数も前年比16%増の92,864台を達成した。しかし、詳細な数字を見ると、深刻な問題が浮かび上がる。
最も注目すべきは、調整後の純利益が前年比20%減の10.2億元に落ち込んだことだ。これは一時的な現象ではなく、連続する利益減少傾向の一部である。さらに、車両1台当たりの平均販売価格(ASP)が2024年の30.2万元(約567万円)から2025年第1四半期には26.57万元(約499万円)に低下し、环比(前四半期比)で1.1%下落した。この価格下落は、中国の新エネルギー車市場で激化する「価格戦争」の影響を如実に示している。
一方、全体の毛利率は20.6%、車両毛利率は19.3%と、依然として比較的高い水準を維持している。これは、理想汽車が増程式技術によるコスト管理やブランド力で一定の競争力を保っていることを意味する。しかし、「増収減益」という構造的な問題は、価格競争が利益プールを侵食しつつある現実を浮き彫りにしている。
(中国経済新聞)