中国NEV自動車市場、値下げ競争に

2025/05/30 15:30

中国のNEV車業界が「成熟化内巻段階」に入ったことを浮き彫りにしています。BYDはNEVの販売台数で圧倒的なリーダーであり、2025年4月の販売台数は約24万台に達しました。一方、長城汽車の高級NEVブランド「魏牌(WEY)」は同月わずか4305台と、BYDとの差は歴然です。この格差は、BYDが低価格戦略で市場シェアを独占し、競合他社を圧迫している現実を反映しています。BYDは製造コストを極限まで抑え、技術面でもブレードバッテリーやDM-iハイブリッド技術で一定の進歩を遂げています。しかし、値下げ競争は「一台売るごとに赤字」というリスクを伴い、業界全体の収益性を脅かしています。

他の自動車メーカーも対抗策として値下げに追随せざるを得ず、広汽埃安(GAC Aion)なども値下げを発表しました。この新たな価格戦争の兆候は、各社のキャッシュフローが表面上ほど健全でないことを示唆しています。

消費者にとっては、価格競争の激化は車両価格の低下や購入特典の増加というメリットをもたらします。しかし、これは両刃の剣でもあります。赤字販売が常態化すれば、車両の素材や装備で「見えないコストカット」が行われる可能性があります。特に10万元(約200万円)前後の価格帯は競争が最も激しく、品質や安全性の妥協が懸念されます。

各社は差別化戦略で生き残りを図っています。たとえば、小米(シャオミ)はデザイン性、理想汽車は「冷蔵庫・カラーテレビ・大型ソファ」の快適性を、ファーウェイは高度な自動運転技術をアピールしています。一方、BYDは低価格と大量生産で市場を席巻する戦略を堅持していますが、これが長期的に持続可能かどうかは疑問です。

(中国経済新聞)