吉利汽車、子会社極氪の私有化を計画

2025/05/9 15:30

中国の大手自動車メーカー、吉利汽車(Geely Automobile、00175.HK)は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する子会社極氪(Zeekr、NYSE:ZK)の全株式をプレミアム価格で取得し、完全私有化する計画を発表した。この取引が完了すれば、極氪は吉利汽車と完全に統合される。吉利汽車は2025年5月7日にこの計画を公表した。

この動きの背景には、米中間の緊張の高まりがある可能性が指摘されている。5月2日、米共和党のジョン・ムレナール下院議員(「米中戦略競争特別委員会」委員長)やリック・スコット上院議員(老年化委員会委員長)らが、米国証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長に書簡を送り、米国に上場する25の中国企業に対し、取引停止や上場廃止措置を求める声明を出した。この書簡では、極氪を含む企業が米国投資家の支援を受けながら、市場、投資家、及び国家安全保障に「許容できないリスク」をもたらしていると指摘された。吉利汽車の今回の決定が、こうした米国の規制圧力や地政学的摩擦に関連しているかどうかは、現時点では明らかではない。

吉利汽車と極氪は、浙江吉利控股集団(吉利控股)の傘下にある自動車製造企業である。極氪は2024年5月にNYSEに上場し、1株21ドルで2100万アメリカ預託証券(ADS)を発行、約4.41億ドルの資金を調達した。1ADSは普通株10株に相当し、発行済み株式総数の約8%を占める。現在、吉利汽車は極氪の株式の約65.7%を保有している。

吉利汽車は、極氪の残りの発行済み株式またはADSを、1株あたり2.566ドル(ADSでは25.66ドル)で取得することを提案している。この買収価格は、直近の取引日終値に対して13.6%、過去30取引日の平均価格に対して20%のプレミアムとなる。極氪の株主およびADS保有者は、現金または吉利汽車の新発行株式を受け取る選択肢が与えられる。

吉利汽車によると、極氪の私有化が完了すれば、極氪は同社の完全子会社となり、NYSEから上場廃止となる。この取引により、極氪の資産とリソースの完全統合が可能となり、吉利汽車の乗用車事業の競争力が強化される。また、グローバル市場や経済的課題に対応し、極氪の将来の戦略的方向性を明確化できると期待されている。

吉利の統合計画では、ブランド戦略として、傘下のリンクアンドコー(Lynk & Co、領克自動車)は極氪に統合され、その他のブランドは吉利汽車に順次統合される。これにより、極氪と吉利の2大ブランド体制が形成される。さらに、事業面では、吉利控股が自動運転支援システム、スマートコックピット、バッテリーなどの分野で研究開発、スタッフ、事業体の統合を進めている。

資金調達に関しては、吉利汽車は新株発行、社内キャッシュリザーブ、債務ファイナンスなどを活用して、極氪の私有化に必要な資金を確保する計画だ。

この私有化計画は、吉利汽車がグローバルな競争環境や地政学的リスクに対応しながら、事業の効率化と成長を目指す戦略の一環とみられる。今後の取引の進展とその影響に注目が集まる。

(中国経済新聞)