テンセント、2024年は売上高13兆円超で前年比8%増、AI導入を加速

2025/03/21 12:29

テンセント・ホールディングスが3月19日に発表した2024年のQ4と年間の決算報告を見ると、AIの導入による事業の革新や新興事業とゲーム事業の相乗効果により、年間実績でかなりの好調ぶりが示されている。

2024年は、第4四半期は売上高が前年同期比11%増の1724.5億元(約3兆5576億円)で、営業利益は同じく21%の594.8億元(約1兆2270億円)であり、年間では売上高が前年比8%増の6603億元(約13兆6219億円)で、粗利益は19%、営業利益(Non-IFRS)は24%と確実な伸びを果たした。

テンセントはAIへの取り組みについて、「自社開発+オープンソース」という平行戦略で事業を一新する方針を明確化しており、自社のLLM(大規模言語モデル)「混元」を社内700以上の場面に導入し、「混元T1」や「Turbo S」も打ち出して各事業の成長ももたらした。また「テンセント元宝」や「テンセント文檔(Tencent Docs)、AIワークステーションのima.copilotなどでオープンソースLLMを積極的に取り込み、AIを一段と身近で利用しやすいものにしている。

「新興事業」に勢いが出ており、AIの普及を受けて元宝、Wechat捜一捜、Wechatミニモール、テンセントビデオが好調となったほか、広告、ゲーム、音声・ビデオ通話などの基本分野もAIの活用で刷新されている。

テンセントの取締役会会長兼CEOであるポニー・マー氏は、「AIによる広告プラットフォームの改良やテンセントビデオのユーザー数増加、ゲームの好調を受け、2024年第4四半期は売上高が二けた増を果たし、運営効率も引き続き上昇している。商品の革新を一段と早め、ハイレベルなモデルの開発を進めるべく、数か月前にAIスタッフを立て直しており、AI関連の資本支出を増やした」と述べている。

またテンセントは春節以降、社外のモデルであるDeepSeek-R1をシリーズ商品に相次ぎ導入している。まずテンセントクラウドでボタン一つでの接続を果たし、その後ima、元宝、Tencent Docsでも接続し、続いてWechatで試験運用を始めた。さらにQQブラウザ、テンセントマップ、QQ音楽、テンセント理財通、捜狗ブラウザなどもLLMの混元とDeepSeek-R1を本格導入すると発表しており、AIサービスの利用範囲がさらに拡大する。

テンセントは、個人だけでなく法人ユーザーに対しても、柔軟に複数のモデルを使って演算力からモデルの設置、産業の実施までトータルチェーンでサポートしている。こうしたマルチモデルのスタイルは今、行政手続き、医療、教育、文化や観光など30以上の分野で導入され、イノベーション効果を様々な人にもたらしている。

テンセントミーティング、Tencent Docs、WeChat WorkなどもAIの支えで中身を充実化させている。テンセントミーティングは議事録作成や録画、自動サマリーといったAIの機能が付加したことで月間アクティブユーザー数が1500万人に達し、Tencent Docsも同じく2億人を超えて120万以上の企業や団体で利用されており、AIやドキュメントの処理能力をベースに作業効率が著しく向上している。法人向けWechatは第4四半期、AIの活用を受けて収入が倍増しており、テンセントミーティングも前年比40%以上の増加で、法人事業について収入、利益率ともに前年増を果たした。決算を見ると、フィンテック・法人サービスについて第4四半期の売上高は前年同期より3%増えて561.3億元であった。

AIについて、基本分野ではマーケティングサービスとゲームで早期導入を果たしている。ゲーム事業ではAIによる面白味のある体験を模索しているほか、LLMのスキルを制作価値の高いゲームに統合している。

テンセントは2016年にAI Labを設け、2024年はQ4の資本支出が前年同期比386%増の365.8億元で、年間では過去最高の767.6億元で、売上高全体の11.6%に相当するものだった。研究開発費は2024年が706.9億元で、2018年以降の累計額は3403億元となっている。

AIの後押しでWechat事業が全面的にグレードアップし、勢いも出ている。決算によると、Wechatの月間アクティブユーザー数は海外版も含めて13.85億人となり、検索や入力法、コンテンツ生成などでAIの導入が進んで、スマート化でユーザーやクリエイター、事業者をサポートしている。テンセントビデオ、Wechatミニモール、Wechat捜一捜など新興事業も好調であり、Wechat事業を一新する重要なけん引役となっている。

このうちテンセントビデオは、様々な手段を通じて創作事業を発展させ、2024年は閲覧時間が急速に増えて、第4四半期の広告料収入は前年同期より60%も増えた。

WechatミニモールはWechat事業のSNSやコンテンツ、決済体制をバックに、インデックス化や標準化した商品取引ができるようになり、使いやすさや取引力が向上している。2024年は取り扱い規模が急速に増え、注文数は前年比125%の増加を果たした。

Wechat捜一捜は、混元、DeepSeekなどのLLMを接続させて高機能かつ正確な検索ができるようになった。法人向けWechatの新型バージョン「スマートロボット」、「スマート作表-顧客フォローまとめ」などのAI機能も備わり、ボタン一つで特定のツールが作成され、利用効率が大幅にアップしている。

新興事業でもAI効果が発揮されている。マーケティングサービス部門は急成長して売上高は第4四半期が前年比17%増の350億元、年間では1214億元であった。広告技術プラットフォームの全面更新やテンセントビデオの広告リリース増加、短編ドラマやミニゲームによるミニアプリ広告の増加、捜一捜の広告料収入倍増などによるものである。

テンセントはまた、基本分野については引き続き「長青戦略」を実行している。ゲームについてはこれをバックに、12種類だった品目数をこの1年間で「王者栄耀」「和平精英」「地下城と勇士」「荒野乱闘」「金鏟鏟之戦」「英雄連盟手遊」「無畏契約」「三角州行動」など計14種類に増やした。ゲーム事業は2024年第4四半期、国内・海外ともに二けた成長を記録し、売上高は前年比20%増の492億元(約1兆144億円)であった。

コンテンツについては、テンセント動画で「量より質」を基本線に「ファインコンテンツ」を中心として事業展開している。また短編ドラマをどしどしと配信しており、レベルアップや様々な取り組みを果たしたことで、動画有料会員数は増加傾向を維持して2024年には1.13億人となっている。

テンセント音楽もオンライン事業が好調で、年間の定期利用収入は前年より25.9%増えて152.3億元、第4四半期の有料会員数は13.4%増えて1.21億人であった。

(中国経済新聞)