12月10日、中国の世界最大手EV用蓄電池メーカーの寧徳時代新能源(CATL)と欧米系の自動車大手Stellantis(ステランティス)は、双方が対等出資する形で合弁企業を設立し、スペインのサラゴサで41億ユーロ(約6525億円)を投資して大型のリン酸鉄リチウム電池の工場を建設すると発表した。2026年末に生産開始予定で、年産能力は50GWhという。
今年に入り、EUも含め世界の主要国が、電池の国内調達を目指して様々な策を打ち出しているが、ヨーロッパではリチウムイオン電池の現地製造は難航状態である。電池やサプライチェーンに詳しいブルームバーグ・ニューエナジーファイナンスの史家琰氏は先ごろ、「ヨーロッパでは中止もしくは延期、あるいは規模縮小となった生産設備が600GWhを超えている」と述べている。
保護主義とされているヨーロッパでも、域内の電池メーカーを支えきれなくなっており、2023年以降にBritishvolt、AMTE Powerなど複数社が破産宣告をしている。2020年にヨーロッパの大手バッテリメーカー「ノースボルト」(Northvolt)とBMWが20億ユーロ(約3183億円)の契約を結んだが、Northvoltがまる2年間も製品を引き渡さず、BMWは今年6月にやむなく注文を取り下げると発表した。Northvoltもその後11月に、最大で2.45億ドル(約371億円)の資金を調達すべく破産保護申請をしている。
CATLの曽毓群会長は今年9月にネットのブログ番組で、ヨーロッパの電池メーカーが良い製品を作れないとの問題について、「設計、工程、設備という3つの課題が存在している」と述べた。また曽会長は、人材育成と生産思考という2つの要因も挙げている。人材育成については、「中国は電気化学を学びたい学生が多く、この分野で大量の人材を育てているが、欧米各国の学生はフィナンシャルや半導体などを履修する傾向が強い」と述べている。
また曽会長は生産思考について、「ヨーロッパの電池メーカーが生産規模を拡大する際に問題が生じる主な理由は、設計、プロセス、設備が不十分だからだ」と見ている。「メーカーが電池の電気化学の原理や副反応を知らなければ、設計する際に、起こりうるリスクを予見できない。このため、小規模なテストではよい性能を示した製品でも、生産規模を拡大した際に、利用率や信頼性、安全性に問題が生じる」といった例を挙げている。
(中国経済新聞)