日本製鉄と宝山鋼鉄が「熟年離婚」した理由

2024/08/29 18:00

結婚から何十年も過ぎ、リタイヤ間近となった夫婦が、積年の恨みなどに耐えかねて離婚に至る。こうした社会現象は「熟年離婚」と呼ばれる。

1977年、鉄鋼メーカー最大手の新日鉄(現日本製鉄)は、中国で近代的な製鉄所の建設を支援すると発表し、これを受けて上海のバンドに「宝山製鉄所」が誕生した。しかし2024年7月23日、宝山鋼鉄との提携を解消すると発表した。半世紀にわたった両者の婚姻関係に突如終止符が打たれたのである。

中国の粗鋼生産量は、1970年代は年間2500万トン程度であり、良質な鉄板の生産量は少なかった。中国政府は1977年、日本政府に対し、良質な鉄板が作れる近代的な製鉄所の建設を支援するよう求め、これに日本側が応じ、新日鉄に建設支援を委託した。

1978年、当時の鄧小平副総理が来日して新日鉄最大の製造拠点である千葉県君津市の製鉄所を視察し、後に「中国にも同じような製鉄所を建設してほしい」と語った。

新日鉄はその後、上海の宝山製鉄所に都合1万人以上の技術者を派遣し、1985年に高炉の火入れが行われた。その後も新日鉄は何度も拡張工事に携わってきた。

作家の山崎豊子氏が当時の出来事を元に書き下ろした小説「大地の子」が、1995年に日中両国の共同制作でテレビドラマ化され、両国民に大変な感動を与えて友好のしるしとなった。主人公の陸一心の父親代わりの役を演じた俳優の朱旭氏は、日本で名の知られた存在になった。

21世紀に入り、日本の自動車メーカーが相次いで中国に進出したことから、自動車用鋼板の需要が一気に増えた。そこで新日鉄は、宝山鋼鉄と合弁で上質鋼材の生産販売を手掛ける「宝鋼新日鉄自動車鋼板」(BNA)を設立した。合弁契約の期間は20年で、出資割合は最終的に50%ずつとなった。

BNAはこれまでに1000億円(約50億元)以上を投資しており、年産量は262万トンで、中国の鋼材生産能力の70%を占めるに至った。

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